LUCE

□衝撃
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ゾクッとした。
自然とそちらを見てしまう。
先ほどまでザワザワしていた店内が嘘のように静かになり、聞こえるのは音楽だけ。
誰かが息を飲む音が聞こえたような気がした。




そこに立っていたのは サングラスをかけた茶髪の女の子。
高校生、いや、大学生だろうか。
サングラスのせいで歳は分からない。
だがその身体から発せられる存在感には思わず息が止まった。




KJ「ラ、ライトだ」




啓司が小さな声で呟いた。
その瞬間、店に大きな歓声が広がった。



「「「わぁーーー!」」」

「「「ライトーーーー!!」」」

「「「待ってましたーー!」」」




客が一気に声を出す。
だが俺は声が出なかった。
目がライトに釘付けだった。
ライトは少し口の端を二ッとあげ、歓声を浴びながら真っ直ぐステージへ歩いて行った。



「さぁ、お待ちかね。ライトのパフォーマンスが始まるぞ」



千が楽しそうに言った。


「「「ライト!ライト!ライト!ライト!」」」



ライトがステージにつくと、ライトコールが始まった。
うっさんも啓司もステージを食い入る様に見ていた。
ライトが手を前に出し、コールをストップさせた。
観客は皆、一言も発さずライトを見つめている。
そしてステージ端にいるDJと目配せをした。
次の瞬間ライトが動き出した。







衝撃だった。








「「キャーーー!ライトーー!」」


「「「わぁぁぁーーーー!」」」



一気に会場の温度が上がった。
目を離すことのできないライトのパフォーマンス。
軽やかに、でもキレがありとても形容し難いダンス。




HR「すげェ…」



思わず声が出た。



「どうだ?ヤベェだろ?」


千がいつの間にか俺の隣に来て、ステージを見つめていた。


HR「あぁ…」



言葉に出来ない俺を見て、千は面白そうに笑った。



「なんで、皆があいつの事を ライト って呼ぶか分かったか?」


HR「あぁ…」



わかった。
ライトの動きは人を惹きつける。
それこそ、真っ暗な場所に1つの光があるように。
そこだけが、輝いて見える。
こんな才能を持つ奴がいたなんて。




「ここじゃあんまり見えねェだろ。もう少し前に行ってこいよ。」



千がそう言うと、直ぐに前に行った啓司。
うっさんもその後を追って前に行った。
俺ももっと見たい。
もっと近くで感じたい。
そう思ったら自然と足が前に進んでいた。
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