LUCE

□親離れ 子離れ
1ページ/3ページ



ホテルの一室。
俺はルカと一緒に帰ってきた。
車内でもルカは終始黙ったまま。
正直、俺もこんなルカを見るのは初めてで、戸惑ってる。
だが、ルカも真剣に考えてるんだろ。


「ルカ。水いるか?」

「あ、マスター。いいよ、私がやるから…」

「いいって!座ってろよな」


そう言って俺はルカをソファに座らせると、備え付けの冷蔵庫から水を取り出した。


「ほれ」

「あ、ありがとう。」


ゴクゴクと水を飲み干すルカの前に座る。



んー。やっぱ1人にしてた方がいいか?
1人で考える時間も欲しいだろ。
そう思って、立ち上がろうとした時。


「マスター」


ルカが口を開いた。


「ん?」

「私さ…」


ルカは下を見たまま、途切れ途切れに呟いた。
俺は急かすこともなく、浮かしていた腰を下ろすと、ルカが話すのを待った。



「私の夢は、マスターに認めてもらうことなんだよね」

「うん、」

「だから、今回の大会で優勝したら、認めて貰えるかなと思って、今まで頑張ってきたの」


「そうだな。」


前から言ってたもんな。お前。
優勝したら、マスターも私のこと凄いって思うでしょ?って。




「俺はお前の事、すげーって思ったよ。お前のこと、認めてる。」




そう言うと、ルカはギュッと膝の上に置いた手を握った。



「夢は…叶ったんだよ」

「あぁ、」

「叶ったって事は、独り立ちしなきゃいけない。」



辛そうに眉を寄せるルカ。

確かに…


「俺はもうお前に教えることはねぇからな。」



「ねぇ、マスター。私、HIROさんからスカウトされてビックリした。」


「なんで?」

「だって、優勝した私には沢山オファーが来たんだよ?それこそ、すっごい有名な歌手とかと共演しないか。とか…
それって、プロのダンサーとしてはスゴく嬉しい話でしょ?」




そうだな。
歌手との共演はプロのダンサーとして一人前だってことだ。



「でも、私。嬉しいとは思わなかったの。」



バカだよね。とルカは笑った。



「私、ダンサーとしての地位よりライブハウスで踊ってたほうが楽しいなって思ったの。」



ルカ…



「ライブハウスで踊ってるとね。皆が笑顔になって凄く楽しそうなの。その時、踊ってることに喜びを感じてた。」




マスター。とルカは顔を上げた。
その目は何処か決心が着いたようにも取れた。



「HIROさんは、私に笑顔にして欲しいって言った。一緒に楽しませようって言った。私、そっちの方が…嬉しかった。」


「ルカ…」


「私、LDHに入りたい。人を笑顔にしたい。」



強く、迷いのない言葉だった。



ルカ。


お前はそんな事を考えられるようになったんだな。
小さかったお前はいつの間にか大きくなっていて、今は人を喜ばせたいと言えるぐらいになったんだな。



そうか…


「ルカ。それが…お前の答えだな?」


コクンとルカが頷いた。


「芸能界は汚い。嫉妬とか醜いものが渦巻いてる。それでもいいんだな?」


「うん」


「お前が決めたんだ。決めたことなら、最後まで貫き通せよ!」


「うんっ!マスター!」


ルカが俺の胸に飛び込んできた。
お前なら…大丈夫だろ
俺も、子離れしねぇとなぁ
そう思って目を瞑ると、頬に熱いものが流れた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ