LUCE
□次のステージへ
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「「キャーー!」」
「「ライトーー!!」」
多くの歓声が聞こえる。
眩しいほどのスポットライトを浴びながら軽快な音楽に合わせステップを踏むとライブハウスは熱気に包まれた。お客さんの顔を見ると皆が笑顔で。この瞬間が私は一番好き。
最後のターンを決めて、ポーズをとると一際大きな歓声が上がった
「「わぁーー!」」
「「ライトサイコォーー!!」」
ライブハウスが渦巻くような興奮の中、私は歓声を背に舞台を降りた。
「ライト!今日も良かったぜ!」
「ライト!これから飲みに行かねぇか?」
私にかける言葉を軽くあしらいながらカウンターに近づく。
「おう、ライト!今日も凄かったな」
聞き慣れた声に目を向けると、頭に赤のヘアバンドをした男がニコニコした顔で私を見つめていた。
「千さん」
ここのバーテンダーでもある千さんは、 お疲れさん と言いながら私の前に特製オレンジジュースを置いてくれた。
「ありがとう」
「いいって、礼なんか。それより、お前。今日でここに来んの辞めるんだって?みんな噂してる」
「あれ、バレてたの?秘密にしてたのに」
「お前、隠し事出来ないタイプだもんな」
はははっと面白そうに笑う千さん。
「千さん、私の事バカにしてるでしょ?」
「え、いや、そんなことねぇよ」
困ったように笑う千さんを睨む。
「にしても、残念だな」
「なにが?」
「お前の事だよ。このライブハウスの顔じゃねぇか。そいつがやめるとなると…なぁ…」
「確かに、このライブハウスにはお世話になったよ。でも、私も前に進まなきゃ。」
そう。
何年も前から私はここに通ってダンスの実力を磨いてきた。どうやったら盛り上げられるか、どうやったら人を惹きつけるか。
それを教えてくれたのはこのライブハウスって言っても過言じゃない。でも、次のステージに行かなくちゃいけない。
そう、マスターと約束したから…
「千さん。私ね、アメリカに行くの。」
「ア、アメリカぁ!?」
「うん。」
千さんは、よっぽど驚いたのか目が飛び出そうなほど大きく開いている。
いや、怖いよ千さん。
「アメリカ!?あの!?」
「そう。」
「あっちに住むのか?!」
「うーん…それも一応考えてはいるかな。私ね、大会に出るの。」
「大会?」
「そう、ダンスの世界大会。そこで優勝して、実力を世界に示すの!」
そしてマスターに認めてもらう。それが私の目標。
小さい頃からのね。
「マジでか。ライト」
「マジで。」
「確かに、お前なら優勝も視野に入るだろうけど…」
「だから、応援してね。千さん」
ニッと笑って言うと、千さんは眉を寄せた。でも直ぐにいつもの笑顔に戻った。
「変える気はねぇみたいだな。」
「うん。千さんにもお世話になったね」
「まったく…本当だぜ。思い返してみれば、いろいろあったよなー… お前がここに初めて来た日なんて、多分一生忘れねぇな。」
懐かしそうに言う千さん。千さんには沢山迷惑かけて、沢山心配させて…それでも私を妹のように可愛がってくれて、色々教えてくれた。言葉では表せないほど、千さんには感謝している。
カウンターテーブルに置いてあるオレンジジュースを飲み干す。
ここに来ると、必ず千さんはこのオレンジジュースを出してくれたっけ。