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□バレンタイン 〜千聡〜
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走って自室に行ってしまったハヤトをすぐには追いかけずにその場に立っていた。
ハヤトは私のことをよく知っている。
既製品ばかりを口にすることも、
女からのものはほとんど口にしないことも。
身内のものですら疑うことも。
それを知った上で、箱を手に持ち私を待っていた。
何を考えていたかは、想像がついた。
「私の潔癖症か。」
好きな人からのものなら何をもらっても喜ぶのが普通の一般人だ。
ただし、明らかに嫌がらせなどの目的のもの出なければということは大前提だ。
だが、
ハヤトが相手というのならば別だ。
少しくらいの嫌がらせすらも可愛く、そして愛おしく思える。
彼のものならば受け取るというのに。
「特別なのは君だけなのに。」
このことを彼に伝えなければいけない。
彼は特別なのだと。