オリジナル作品
□朝顔〜君と、ひと夏の〜
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うだるような暑さに似合わない、爽やかな声が聞こえてくる。
「おはよっ!」
「・・・え?あ、おはようございます…」
新聞配達のバイトで朝から自転車を走らせる私の後ろに、いつから居たのか・・・可愛らしい少年の姿があった。
「初めまして…だね、お姉さん」
「う、うん・・・
こんなに朝早くから、珍しいね」
小柄で人懐っこそうな笑みを浮かべた彼のような子が、こんな早朝に町を歩いているなんて、逆にちょっと危ないような気さえする。
「えへへっ、早起きは得意なんだよ!
えっと、僕・・・アサキ!アサキっていうんだ。
お姉さんは?名前、何ていうの?」
なぜここまで早起きなのか、という疑問を誤魔化すように、彼は聞いてきた。
「私は・・・愛花」
「愛花お姉さん!可愛い名前なんだね!
・・・ねえ、このまま少し、お話しててもいい?」
「え、でも私・・・お仕事が」
「お姉さんの邪魔はしないから!そのまま自転車漕いでていいよ!」
「・・・分かった」
自転車を走らせると、
不思議なことに、少年の姿は全く遠ざからない。
走っている・・・というほど息も上がっていない!
「えっ!?」
「ねっ、大丈夫だったでしょ?
僕、足も早いんだ!」
こんなに俊足の子、いるのかな・・・
妙だと思いつつ、これ以上何も言う気になれなくて、そのまま二人話しながら、新聞を配った。