太刀川隊
□プレゼント。
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「公平!!」
待ち合わせ場所の公園で寒空の下、彼女の鶴を待っていれば、俺の名前を呼んでこっちに走ってきた。
「おー、転ぶなよー」
「わかってるよ!…うぎゃっ」
「っと、言った矢先に転ぶなよ」
転ぶなと言ったのに目の前で転ぶ鶴。
手を掴んで転ぶのを阻止してやった。
「あはは、申し訳ない」
「ってかさ、もうちょい色気のあるカッコしてこいよ」
せっかくのクリスマスデートなんだしさ、ジーパンにもこもこのジャンパーじゃなくて、スカートとか履いてこいよな。
「いーじゃん別に。スカートとか寒いし」
「そーかい。まぁいいけどさ」
別に服にこだわりはないから深くまでは言わないけど、少し期待していた。
どんなカッコしてくんのかなって。
まぁ、俺以上に服に興味がない鶴に期待した俺がバカだったのだけど。
「ねー、やっぱ私公平の家行きたーい」
「はぁ?」
「めんどくさくなっちゃった。公平の家行こ?」
「んだよ、待ち合わせの意味ねーじゃん」
ほんと自由人だな。
鶴の我がままは今に始まったことじゃねぇし、俺も寒いからいーんだけど。
「じゃ、行くか」
「わーい」
「おじゃましまーす」
「今誰もいねぇよ」
「そうなの?まぁ、あんまカンケーないけど」
「まぁそうだな〜」
鶴を先に部屋に行かせて適当な飲み物とお菓子を持っていく。
鶴は既にベッドで横になっていた。
「なに、ヤる気満々?」
「なわけ。寒かったからあったまってんの」
「んだよ、残念」
「あははは」
俺もベッドに腰掛ければ、鶴が腰に抱きついてきた。
「どうしたよ。今日はとことん甘えただな」
「んー。眠い」
「おい、せっかく来てそれかよ」
「うん〜。」
「ったく。少しだけな」
「は〜い」
こいつの昼ねはしょっちゅうあることだ。
まったく。お前が寝てる間、俺の理性は大変なことになってんだぞ。
そんなことを知らない鶴は、俺に抱きついたまますぅすぅと寝息を立てている。
この体制が一番寝心地いいらしい。
「おい、起きろー」
「ん〜、」
「起きろって」
「ん、おはよ」
「おはよじゃねぇよ。暇、はやく構え」
「はーい」
そろそろ我慢も出来なくなってきたし、暇だったから起こした。
眠そうな目をなんとか開ける鶴。
「あー。そういえば、公平にクリスマスプレゼントあるの」
「あ、俺もお前にある」
「じゃぁ、せーので渡そ〜」
「オーケー。じゃあ行くぜ?せーの、」
適当な鶴のノリに適当に合わせて、プレゼントを渡しあう。
俺は小さな箱を渡して鶴は赤いリボンのついた袋をくれた。
ふたりでがさごそと中身を確認して、顔を見合わせて笑った。
「公平すげー。私と同じようなこと考えてたんだー」
「そうだなー」
俺は鶴に二つ分のネックレスを、鶴は、二つ分のマフラーを渡していた。
「これ、片方は私がつけて、もう片方は公平がつけるんでしょ?」
「そうだよ。このマフラーも?」
「うん。公平は黒ねー。私白ー」
「おう。ありがとな」
「公平も。ありがとね」
お互い考えていたことは一緒ということが、一番のプレゼントだったかも。
ふたりでそんなことを話しながら、ネックレスとマフラーをつけあう。
「外に出るわけじゃないのにマフラーとか。なんか笑えるね」
「いんじゃね。俺たち以外見てないし」
「そうだねー」
マフラーをつけたことで更にあたたかくなって、俺たちは一緒に寝てしまった。
結局クリスマスはほとんど寝ていたけど、すごく幸せだった。
起きたときに、来年もよろしく、と狸寝入りした鶴に言われて、我慢できなくなった俺は、すぐに鶴を襲った。