小十郎×佐助

□以心伝心 *
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「あ、片倉先生おはよー」
「…おはよう」

いつものように飄々とした明るい声が寝起きの耳に強く響く。
彼は猿飛佐助と言って、生徒だ。
周囲は誰も知らないが、一応小十郎の恋人でもある。

「いつから…」
「30分くらい前かな。先生にちょっと質問したいことがあって来たら寝てたからさ」
「寝てたのにどうやって膝枕したんだ?」

疑問を素直に口にしたら、佐助はにっこりと笑顔を浮かべた。

「簡単。寝てる先生の頭持ち上げて、自分の体を滑り込ませた」
「…そうか」

言われてみれば何か頭に触れたような気がしたが、あまりに眠くて覚えていない。
ここのところ仕事に追われろくに眠っておらず、一気に疲労が来たらしく仮眠のつもりが大分寝てしまったようだ。
これからの予定がいろいろ大幅に狂ってしまい、やる気が一気に削がれてしまった。
もっとも、恋人が傍にいる時点で仕事を放棄しなくてはいけないのが目に見えてはいるが。

「質問したいところってのは?」
「あ、別に今じゃなくていいよ。先生眠いみたいだし」

佐助の手には文庫本があった。
起きるまで待っていようと考えた佐助の姿が想像できた。
重い頭が乗っていては辛いだろうと思い上体を起こそうとすると、佐助に額を押さえられ止められた。

「猿飛?」
「まだいいって。足辛くないし、先生の近くにいれるし」

どうして考えていることが伝わるのだろうか。
佐助の人の気持ちを察せるところが小十郎は尊敬するべき点でもあり、有難い点でもある。
口に出したくないことがあっても、佐助は理解してくれる。
年下なのに甘えてしまう。
甘えた方が佐助は嬉しいのかもしれないが自分の方が年上であり、尚且つ立場上教師でもあるのでどこか気が引ける。
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