小十郎×佐助

□コーヒー味の飴
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佐助の言葉に小十郎が固まった。
驚いているのが見て分かる。

「どうして分かった?」

佐助はニッコリ笑った。

「先生、口寂しいと親指を唇に当てる癖があるんですよ〜」
「…そう、なのか?」

無自覚の癖だったようだ。
ちなみにどうして分かったのか。
答えは簡単。
いつも見ているから。
どんなに机が離れていても、見える位置をキープしている。
一生懸命書類を作成している時など仕事をしている時、口寂しい癖が出ているのを知っている。
仕事が終われば、真っ先に喫煙場へ行くのも知っている。
どんなに吸いたくても、仕事を終わらせるまでは我慢する。

「しかし、子供たちを待たせているからな」

自分の吸いたい欲より子供を優先する。
佐助は、そんな小十郎の真面目さや優しさが大好きだ。
見た目こそ怖いが、中身はとても素晴らしい先生だ。
だから、児童もみんな片倉先生を慕っている。

「そうだね。首を長くして待ってるよ」
「それじゃ行ってくる」
「片倉先生」

振り向いた小十郎に下手投げで何かを渡す。
小十郎はそれをキャッチして握った拳を開いた。
中に入っていたのは飴だった。

「口寂しさを紛らわせるのにどうぞ」
「ありがとな」

その言葉とその笑顔だけでもう十分だ。
でも自分に向けられるのはそれが限界。
あの人の目には子供しか映ってないんだろう。
自分は所詮同じ小学校の先生でしかない。

「俺、子供に戻りたいなぁ…」

誰にも聞こえない小声でつぶやく。
コーヒー味の飴の苦味が口の中を満たしていた。
 
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