小十郎×佐助

□舞い降りた運命 *
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「あたたたた…」

なんて悠長に痛がっている場合ではない。

「す、すみません!!大丈夫ですか!?」

下敷きにしてしまった人物から降りて声をかける。
スーツを着た男が顔をあげた。
佐助は固まってしまった。
何故かと問われてもこれは固まるしかない。
オールバックにまとめた髪、切れ長の目。
堀の深い整った顔には斜めの傷痕。
誰がどう見たってこれは…ヤクザだ。

「…………」

佐助の脳内で警告音が鳴っている。
怖くて声が出ないし、動けない。
ただ食い入るように目の前の人物を見るしかなかった。

「っ…あ〜、ったく、あんなところから飛び降りるか?」

男はため息交じりにそう言うと立ち上がった。
砂を丁寧に払い、スーツの皺を整える。
そして佐助に目を向けた。

「す、すみませんでした…ちょっと近道しようと思って」
「んなことはどうでもいい。怪我は?」
「はい?」
「怪我はねぇかって聞いてんだよ」

何故自分が心配されているのだろうか。
こっちは加害者なのに。
佐助が返答に困っていると、男が手を伸ばした。
叩かれる?いや、殴られるのか?
すると、男の手が頭を過ぎ、顔に向かわず佐助の肩に添えられた。
もう一方の手が佐助の足に向かうと膝の裏に入れられた。
そのまま持ち上げられ、お姫様抱っこ状態になってしまった。

「…ええ!?」
「騒ぐな。動けねぇんだろ?」

動けないのは足が痛いからではなくて貴方が怖い…なんて言えたもんじゃない。
しかし、この格好は恥ずかしい。
この道は人通りがほとんどないので他の人に見られてはいないが、それでも恥ずかしい。
お姫様抱っこなんて初めてされた。
ある意味乙女の夢である行為を、見ず知らずのヤクザにされてしまった。
いや、ヤクザが攻撃に近いことをした女をお姫様抱っこするだろうか。
なんて考えているうちに、近くの公園に来ていた。
ベンチに座らされ、ズボンの裾を捲くられた。

「青痣になってんぞ」
「え?」

言われて見てみると、足首のところが青紫になっている。
フェンスを飛び越える時に引っかけてしまったせいだ。
痣を見たら、痛くなってきた。
男はポケットからハンカチを出すと、近くの水飲み場で濡らしてそれを怪我した場所に当てた。
冷たい温度が痛みを無くしていくようだ。
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