小十郎×佐助
□引き金 *
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ここのところ戦、執務、戦、執務の連続でまともなものを口にしたのも久しぶりだ。
「美味い」
「ありがとう。あ、こっちはお中元の蕎麦」
「これも手作りか?」
「そうだよ。しかも、真田の旦那と大将も一緒に作ってくれたんだ」
「信玄公もか。それは有難く食べないとな」
こうしたのんびりと出来る時間も久しぶりだ。
互いに使える者がいて、守る国がある以上、会えないなどということはいつものことで。
そんなことは百も承知しているのに会いたくなってしまう。
我ながら恥ずかしいことだが、どうしようもない。
手を伸ばし佐助の頬に触れてみる。
驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべ甘えるように擦り寄ってくる。
「俺、小十郎さんの手、好きだな」
自分よりも一回り大きくて、骨ばっている逞しい手。
けれど皮膚の柔らかみがあり、温かい。
触れているだけで物凄く安心する。
伊達も戦詰めならば武田もまた戦詰めで、本当に忙しかった。
早く会いたかった、それだけが佐助を突き動かした。
「佐助…」
引き寄せ抱きしめようとした。