小十郎×佐助

□獣化兇様 *
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「分かりました」
「よろしい」

緩く着ていた着流しを綺麗に着直して、佐助は小十郎の前に立った。

「どうやって変化の術ってのはするんだ?」
「えっとね…」

昨夜失敗した時のように右手で型を作り、顔の前に翳した。

「片手か?」
「うん、片手…だね」

指摘されて佐助も疑問に思った。
あまり変化の術を使ったことはないし、人のを見たわけでもないが何故片手なのだろうか。
両手でも出来るのだろうか。
それはほんの少しの興味心からだった。
佐助は右手で型どったのと同じ型を左手で作り顔の前に翳した。

「もしかしたら両手の方が失敗しないかも」
「まあ、試す価値はあるんじゃねぇか?」
「よし…」

神経を集中させて、口を開いた。

「変化!!」

その言葉を合図に術が発動した。
大きな綿で体を包まれるような感覚を感じ、佐助は成功を悟った。
だが、どうも力が大きい。
例えるなら、いつもは布団一枚に包まれるような感覚が、布団二十枚に包まれたような圧迫される感覚。
呼吸が上手く出来なければ、目を開けることさえ出来ない。

「っぐ…」

危険を感じ取った佐助はすぐに術を解除した。
周りに纏わりつくものを払いのけるように、力で押し返した。

「はあッ、はあ…」

術が切れ、呼吸がまともに出来るようになった。
あまりのことに頭がぐるぐる回って思考回路が鈍っている。

「おい、佐助。何だ今の?」
「わ、分かんな……」

ようやく意識がはっきりしてきた時に小十郎の声がした。
顔を上げて、佐助はまた呼吸が止まるかと思った。
さっきの術のせいで脳みそが逝ってしまったのだろうか。
呆然としながら手を伸ばす先は小十郎の頭。
にある……耳。
触れると、獣独特のあの感触があった。

「あ?」

その触れられた感覚に小十郎も驚いて反対の耳を触る。
感触、耳の感触だ。

「「はあああああああ!?」」

二人分の絶叫が木霊した。
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