小十郎×佐助

□幸せです *
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「今日はどこに行きたいんだ?」
「そうだな〜…」

行きたい場所はたくさんある。
しかしプロポーズに最適な場所はどこだろう。
やはりドラマで見るような高級レストランだろうか。

「どっか綺麗なレストランとか行きたいな。高級そうな感じの」
「そうか…ちょっと待ってろ」

小十郎は道のわきに車を止めると携帯電話を取り出し電話をかけた。

「もしもし、伊達コーポレーション副社長の片倉だ。席の予約を取りたいんだが…ああ、分かった。よろしく頼む。今からだから15分ほどでそちらへ着く」

簡単な会話を済ませて電話はすぐに切られた。

「ご希望通りの綺麗なレストランの予約が取れたぞ」
「どこどこ?」
「上杉謙信殿がオーナーをしているレストランだ。知ってるだろう?」

上杉謙信とは自分の父親代わりでもある武田信玄の旧友で、都内でも有数の高級レストランのオーナーを務めている。
佐助も謙信のことはよく知っていたが、レストランに行くのはこれが初めてだ。
何せあそこの高級具合といったら、一般の人間が入れるような店ではない。

「あそこって年末まで予約いっぱいなんじゃなかったっけ?」
「あの店の一角にある席は伊達が特別に所有していてな。上層部の社員なら予約を入れればいつでもとれるようにしてあるんだ」
「すっごーい…」

本当にすごい話だ。
自分と小十郎では格差が違いすぎる。

以前小十郎と付き合いだした頃、小十郎に片思いしていた女性に一度だけ言われたことがあった。
『どうせお金目当てなんでしょ?』
佐助には酷くショックな言葉だった。
本当に心から小十郎を愛しているのに、お金目当てに思われていたのが。
悔しいのに佐助は言い返せなかった。
そう思われても仕方のない程、自分たち二人の身分差は大きい。
恋人は日本でも有数の大きな会社の副社長。
自分といえば、そこらへんの美容院で働く美容師の見習い。
お金目当てと思われても仕方がないと思った。
それでも小十郎は自分を選んでくれているのだ。
お前がいいと言ってくれたのだ。

「け………佐助」
「は、はい?!」
「着いたぞ」

気づけばいつの間にかレストランについていた。
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