政宗×幸村

□物理的距離を越える…
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「は〜…早く戦起きねぇかな」

机の上に山のように積まれた書類や巻物にうんざりする。
「戦が無い時にこそ、この奥州の治安のことを考えなければ」と小十郎に山のような仕事を押し付けられた。
さっきから片付けても片付けても一向に減らない。
元々おとなしくするのが苦手な政宗にとって、執務は地獄以外の何物でもない。

「Ah〜〜〜〜〜〜っ!!」

そのまま畳に倒れ込み、天井を睨みつける。
空いた窓から風が通っていく。
ここのところ寒くなっているのを肌でひしひしと感じる。
もうすぐ冬が来る。
政宗は冬が嫌いだ。
雪が降ったら何も出来ないし、寒いと手も動かない。
ずっとこの奥州で生まれ育ったが、寒さに強くなることは一向にない。

「…雪が降ったら幸村に会えなくなるよなぁ」

下手をしたらこの屋敷からだって一歩も出れなくなってしまうのだから、幸村に会いになど行けるわけがない。
そうなったらいよいよ限界だ。
今だって本当は限界を迎えている。
前に会ったのはいつだったか…。
元気でやっているのだろうか?
今はどこも力を溜めている時らしく、戦火は上がっていない。
幸村が怪我をする心配はないが、あの師弟の殴り合いだ。
怪我をしていたっておかしくない。

「…仕方ねぇ、するか」

何も考えていないと、どうしても幸村のことを考えてしまう。
それならば仕事をしてそちらに没頭した方がまだ気が楽だ。
近くにあった巻物を手に取った時。

「筆頭」

部下の声がした。
しかも、どこか嬉しそうだ。

「どうした?」
「客です」
「客だぁ?誰だ?」
「政宗殿」

襖の向こうから聞こえた声は部下の声ではない。
この声は…。
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