元親×元就

□届くことのない愛
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長曾我部と出会ったのは…随分最近のことなのに昔のように感じる。
瀬戸内の海の上で出会った。
自分を慕う多数の部下を引き連れていた長曾我部は、本当に合間見えないと思っていた。
言葉を交わしても考えが全く違う。
きっとこの男との溝は埋まらないと思っていた。

しかし、そうでもなかったから本当に驚く。
考えが全く違い、忌み嫌っていたのに、何故かあちらから同盟の話を持ちかけてきた。
嫌だったが、中国が手を組むのに妥当なのは四国しか思い当たらず、止む無く同盟を組んだ。
組んだら組んだで、何故かあの男は頻繁に中国を訪れるようになった。
自国を守らなくて良いのかと問えば、俺のところは大丈夫だと根拠のない言葉と笑顔が返ってきた。

我は長曾我部が嫌いだ。

意味の無い行動が一々癪に障った。
それでも長曾我部は何も気にせずにふらっとやってきては、土産を持ってきた。
甘味が好きだと言えば、名物の甘味を持ってきた。
うどんを食してみたいと言えば、うどんを持ってきた。
ここまで我に尽くす意味はあるのだろうか?
最初は真剣に考えたが、途中で止めた。
考えたところでこの男が変わるわけがない。
故に、考えても無駄だということだった。
何か裏があるのではと思い、警戒心を解けなかった。
それでも少しずつは会話するようになった。
部下が長曾我部の傍に居たがる気持が少しだけ理解出来たような気がした。
長曾我部は、人の心の檻を開けるのが上手いのだ。
我の何重にも閉ざされた心も少しだけ開けられた。
それでも、本当に心を開くことが出来なかった。
この歳になるまで開かなかった心は錆び付いていて、自分でも開けることが出来なくなっていた。
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