元親×元就

□苦味の中の甘味
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「…へ?」
「何だ」
「いや、お前が優しいなんて珍しいなぁって思ってよ」

本心を言ったら元就が眉間に皺を寄せた。

「優しさが珍しくて悪かったな」

元就は缶コーヒーを元親に渡さずに、プイッとそっぽを向いてしまった。

「あ、悪ぃ…」
「もう知らぬ」

缶コーヒーを開けて、一口飲んだ。
だが元就が買ってきたのはブラックで、甘党の元就は顔を顰めた。

「…苦い」
「だろうな。お前はブラック飲まないだろうが」

ははは、と笑ってから、椅子に座ったまま元就を抱き寄せる。
スーツ越しに伝わる体温や匂いが疲れた身体に心地よい安息を与える。

「俺の為にわざわざ買ってくれたコーヒーなんだろ?」
「…べ、別にお前の為ではない。我は今日はブラックが飲みたい気分で、お前が疲れたというから…やろうかと思っただけで」

みえみえの嘘が可愛らしい。
現に、元就用のコーヒーは机の上に置いてある。
素直じゃない、本当に。
でも、それが嬉しいのだから重症だ。

「なあ、咽渇いた」
「…そんなに言うならやってもよいぞ」

飲みかけのブラックコーヒーを差し出された。
思わず苦笑いしてしまった。

「ありがとな」

口に入れたブラックコーヒーは、何処か甘い味がした。




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