元親×元就
□幸せの日々
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「海は?」
「ああ、今日は荒れてない。穏やかだ」
元就は毎度元親に海の様子を聞く。
愛する瀬戸の海を。
もう自分が浮かぶことのない海を。
「…そうか」
元就は空を見上げ、太陽の光の眩しさに目を細めた。
海は日輪の光を浴びて今日も綺麗なのだろうか。
「元就、お前海に出ないのか?」
「海に出たところですることはない」
「船に乗って海を見るだけでも違うだろう?」
「まあ、そうだが。我一人で船は動かせぬ。故に仕方が無い」
元就は湯飲みを傍らのお盆に置くと部屋に持って入った。
「さて、仕事の続きでもするか」
「え〜、仕事するのかよ」
「当たり前だ。我は休息していただけで、まだまだ仕事は残っておる」
机に置かれたたくさんの書類の山。
「伊達のところに必要物資の補給もせねばならぬ。国のことにも目を向けねばならぬ。
戦場から身を引いたとて、我は国の長なのだからしっかりせねば」
そう言うと顔を上げた。
「まあ…そなたがいるのだから休息を伸ばしてもよい」
かまってやってもいい。
そう言われたようだ。
縁側にいた元親も部屋に入る。
元就は座布団を差し出したが元親は迷うことなく後ろから元就に抱きついた。