元親×元就
□猫になれば *
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誰か来る!!
元就は服を隠した机に隠れようとしたが、足音の主が襖を開ける方が早かった。
「毛利ー……ってあれ?いねぇな」
入って来たのは四国の鬼、長曾我部元親だった。
織田からの脅威を避ける為に同盟を組んでから、何故か頻繁に城に来るようになったこの男。
今日も来る予定だったのをすっかり忘れていた。
元親が今は猫になってしまった元就を見つけた。
「お、猫じゃねぇか。あいつ猫飼ってたのか。おら、こっち来いよ」
元親はしゃがんでチョイチョイと指で招いた。
しかし見た目は猫でも中身は元就。
そんな呼び掛けに応じる訳がなく、近付こうとはしなかった。
「…お前、飼い主にそっくりだな」
元親は腕を伸ばし猫を抱き上げた。
まさか抱き上げられるとは思っておらず、暴れる間もなく元就はすんなり元親の腕の中に収まってしまった。
「お前の主は何処だ?家臣の奴らに聞いたら部屋にいるって言ってたのによ」
元親の手が元就の頭を撫でる。
大きく温かい手の優しい感触に元就は若干の驚きを感じた。
粗野で豪快で風の向くまま気の向くままな男に、猫を可愛がる優しい一面があるなんて元就は知らなかった。
「…本当に何処に行ったんだろうな」
心地よさに多少うとうとしていると元親が話しかけてきた。
相手は猫だから独り言に近い。