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□硝子玉遊戯
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「ただいまー」
「慶次っ!!」

家に帰って早々、利家の大きな声が響いた。
また説教か…?
若干うんざりしながらも、慶次は声のした台所の方へ歩いて行く。
台所を覗き込んで、驚いた。
泥棒でも入ったのかと言いたいくらい、荒らされている。
その真ん中に佇んでいた利家が慶次の方を向いた。
何故か目が潤んでいる。

「ど、どうしたんだよ!?泥棒?」
「飯が…」
「飯盗まれたの!?」
「盗まれてはおらん。だが…飯が無い」
「はあ!?」

米櫃を見れば空っぽ。
貯蔵用の棚も空っぽ。
確かに食材が全く無い。

「え、まつ姉ちゃんは?」
「まつは…濃姫様と一緒に温泉へ行っている」
「なるほど。でも、まつ姉ちゃんならちゃんとその辺考えて飯作って置いて行ってくれてるだろ?」

慶次の言葉に何も答えない。
何となく答えがわかってしまった。

「もしかして、利…配分考えずに食べたの?」
「だ、だって!!腹が減ったから…つい。それで、何かないかと探していたのだが…何もなくて」

原因はただ単に利家の食べ過ぎ。
もはやこれは笑うしかない。

「利らしいや」
「うう…すまぬ」
「そっか…じゃあ、何か食べ物買ってくるよ」

持っていた風呂敷や土産を机の上に置き、慶次はまた家を出ていった。
残された利家は申し訳なさそうに正座している。

「ん?」

慶次が置いていった土産の中に何か光るものを見つけた。
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