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□独占欲
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事の発端は佐助にあった。

佐助は毎日のように同じクラスのかすがという女子にラブコールをしていた。
と言っても「今日どっか行こうよ」「飯食いに行かない?」などの軽い誘いだ。
これはかすがに気があるからとかではなく、1年生の時から何と無く続いているやりとりなのだ。
事実かすがに好きな人がいることは知っているし、かすがも本気にはしていない。
「嫌だ」「失せろ」言ってくるし、時々は「まあいいぞ」ということもある。
かすがにとってもこのやりとりは日常なのだ。

だが、冗談だと分かっていても小十郎は気にいらなかった。
佐助に止めるよう注意をし、佐助も渋々同意した。
だが、長年のクセみたいなものでうっかり言ってしまったのだ。
運が悪いことに約束した次の日に。
しかもまた運が悪いことに小十郎がいる前で。
数学教員室につれこまれ、壁に追い詰められた。

『猿飛…てめぇいい度胸してんな』
『あ、ごめんなさい。つい口から…んんっ!?』

シャツを掴まれて口付けされた。
その時に口内に何か粒を入れられ、佐助は飲み込んでしまった。

「な…何今の?」
「直に分かる。おら、授業に行ってこい」

と無理矢理数学教員室を追い出されてしまった。
訳が分からずとりあえず授業を受けに教室に戻った。

国語の授業を受けつつ、さっきの飲み込んでしまったものが何なのか考える。
飴というより薬に近かったような気がした。
薬…薬………と考えてある一つのものが頭をよぎった瞬間。
体が急に熱くなった。
正確には体よりも自分の性器。
原因は頭をよぎったあるもの。

『嘘でしょ……本当に媚薬だ』

マズイ。
今は効き始めだからいいが、だんだん効いてきたら授業どころの話ではない。

「先生、ちょっと気分悪いんで保健室行ってきます」
「だいじょうぶですか?」
「は、はい」

佐助は少しふらつく足で教室を出ていった。
歩いて目指す場所は保健室ではなくて数学教員室だが。
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