小十郎×佐助

□従者達と主達
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遠くで鳥が鳴いている。
空は晴れ渡りどこまでも青い。
葉の色も変わり始め、季節の変わり目が目に見えて分かる。

「いつも有難う」
「気にするな」

満面の笑みを浮かべる佐助の傍らには大きな塊。
風呂敷に包まれた小十郎の野菜だ。
今日は幸村と一緒に小十郎のところへ野菜を取りに来たのだ。
正確には貰いに、だが。
いつもは烏で来るのだが、荷物の多さを予想して馬で来たほどだ。
ちなみに、この野菜の風呂敷包みの塊はあと三つある。

「それにしても今日はいい天気だね」
「ああ、そうだな」
「こんな天気の日はどっか出掛けたくなるよね」
「そうだな。山登りとかいいかもしれないな」

なんだか最早夫婦の会話のようになっている。
しかし、この二人付き合い始めてまだ一月ほどしかたっていない。
それなのにこの会話。
一歩間違えば老夫婦にもなりかねない。
まあ、それがこの二人の良さなのだが。

「怪我」
「ん?」
「怪我してる、手首のところ」
「ああ、これか」

小十郎が来ている着流しの下から真っ白い包帯が見えた。
手首から肘の方まで巻いてある。

「どうしたの?」
「戦での怪我じゃねぇよ。倉庫の天井の木が腐っててな、それが落ちてきたのが避けれず怪我しちまった」
「…そっか」
「だから、そんなに泣きそうな顔するな」

どこか悲しそうな佐助の頭を小十郎は撫でた。
それでも佐助は悲しそうだ。

「戦じゃなくても、怪我は心配だって」
「…ありがとな、心配してくれて」
「あ、あはは。いいって」

優しい小十郎の声に佐助は照れ臭そうに笑った。
小十郎はお茶を注ぐと佐助に渡した。
一緒に机に置いた御菓子は南瓜の形をした和菓子だった。

「すっごーい!!これ、どうしたの?」
「俺のところでとれた南瓜で作ってもらったんだ」
「へ〜、綺麗な橙色」

食べるのがもったいないほどの出来栄えだ。

「いただきます」

佐助は丁寧に挨拶をしてから、御菓子を一口大に切り口の中に入れた。
南瓜の甘味が口いっぱいに広がる。

「ん〜、美味しい!!佐助小十郎さんとこの南瓜」
「まあな」

小十郎もお茶を飲み、のんびりと外を眺めている。
佐助も同じように外を見る。
青いそらがどこまでも続いている。
どこまで高いのか分からないほど、果てしなく遠くまで。
暫く黙って二人で空を見上げる。
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