小十郎×佐助

□コーヒー味の飴
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「さるとび先生さようなら〜」
「はい、さようなら。気を付けて帰るんだよ〜」

大きな声で返事をして走って帰る児童の背中を見つめながら、満足気に笑みを浮かべる。
今日も大変だったけどいい一日だった。
佐助が担当しているのは1年生。
ランドセルに背負われている感がするのが、また何とも言えず可愛い。
今ので全員帰路についたわけで。
とりあえず、明日みんなに配るプリントを作って印刷してしまわないと。
途中廊下ですれ違う児童に挨拶をしながら職員室へ向かう。
すると、職員室の扉の前に数人の児童が中を窺うように立っている。

「どうしたんだ?」
「あ、猿飛先生。片倉先生知らない?」
「片倉先生?片倉先生…知らないなぁ。何か用事?」
「一緒に放課後サッカーしようって約束したんだ!!」

児童の一人が持っていたサッカーボールを高々と掲げる。
名札を見れば4年3組。
片倉先生のクラスの児童だ。

「そっか。じゃあ、グランドでサッカーしてなよ。先生が片倉先生に伝えといてあげるから」
「ありがとう、猿飛先生!!」

笑顔でグランドへと走っていく児童達。
本当、子供は見ていて飽きない。
なんてひたっている場合ではない。

「お仕事、お仕事」

自分の席に着き、パソコンをカタカタ打ち始める。
ちなみに内容は今度の参観日のお知らせだ。
暫く画面とにらめっこしながら文章を作成していると、小十郎が何やら大荷物を抱えて職員室に入ってきた。

「あ、片倉先生」
「猿飛…何だ?」
「児童が呼んでたよ。サッカーの約束してたって」
「ああ。もう来たのか、あいつら」

抱えていたファイルを机に置いて、小十郎は腕時計を見た。

「って、もうこんな時間か…」
「何してたの?」
「今度の参観日で何をしようか考えていた」
「何の授業?」
「道徳だ」

確かに道徳なら悩んでしまう。
佐助は算数なので、いつも通りの授業を見てもらう形にする予定なのだが。
保護者がいる以上、下手な真似は出来ない。
本当、大変なのだ。

「じゃあ、今からいろいろ考えないといけないね」
「まあな。とりあえず、子供との約束を果たさないと…」
「…片倉先生」
「ん?」
「煙草吸いたいなら一本吸って行ったらどう?」
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