小十郎×佐助

□引き金 *
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「暑中お見舞い申し上げます」

笑顔と言葉と手土産を持って現われた佐助に、玄関で出迎えた小十郎は目を点にした。

「…何があった?」
「嫌だな〜、言ってるじゃん。暑中お見舞いって。お中元届けに来たんだ」

佐助は笑顔を変えないまま答えた。
格好は普段の忍装束のままだが、本当に暑中見舞いに来ただけらしい。
ちょうど仕事も終わらせたし、政宗も成実と共に出掛けていていない。
何より、遠くから会いに来てくれた恋人だ。
追い返すわけなどない。

「入れ」
「お邪魔しまーす」

招き入れるとご機嫌で中にあがる。
確か…前田家からもらったお中元のお茶があったはず。
小十郎が台所でお茶を用意している間、佐助も何やら準備をしている。

「あ、小十郎さん。お茶菓子こっちで用意してるから」
「そうか」

用意のいいこった。
お茶を急須に入れて持っていくと、机の上に御手洗団子があった。
佐助の手作りだと、小十郎にはすぐ分かった。

「真田殿の余り物か?」
「あ、分かった?」
「真田殿が好きだと、政宗様から聞いている」
「なんか作りすぎちゃってさ。お土産に」
「有難くいただく」

甘味は普段は好んで口にしないが、佐助のは美味しいのでいただくことにしている。
口に入れると広がる甘辛い味と、団子の食感がよい。
執務詰めで疲れていた体に、糖分が沁みるようだ。
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