小十郎×佐助

□幸せです *
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昨日買ったばかりのパステルオレンジのワンピースに白いカーデ。
お気に入りのピアスとネックレス。
髪型はいつもとは違い下ろしてワックスでふわふわにして。
化粧は薄く綺麗に。

「よしっ」

鏡の前で自分の全身をチェックしてから、佐助は気合いを入れた。
今日は恋人である片倉小十郎とのデート。
これで…30回目のデート。
今日は記念すべき日にするんだ。
もう一度鏡で自分の姿を確認してから時計を見ると、17時59分を表示していた。
佐助は鞄を掴むと、急いで部屋を後にした。


外に出ると、黒のベンツが待っていた。
知らない人が見ると、どこの組の人間がいるのだろうか、と驚いてしまうだろう。
そこに乗っていた人物が此方に気づき手を軽く振った。
手を振り返してから走って車に近づく。

「小十郎さん、久しぶり」
「ああ、久しぶりだな」

挨拶をすませ車に乗り込む。
車内には洋楽が流れている。
どこの誰の歌かは分からないが、佐助は小十郎の車で聞く音楽が好きだ。
それをBGMに車は道路を走る。

「仕事は片付いた?」
「ある程度な…政宗様がもう少し気合いを入れて仕事をしてくれればいいんだが」
「政宗もめんどうなんでしょ。社長の仕事なんて、俺様聞いただけで寒気がするもん」

小十郎は政宗という青年の下で働いている。
青年といっても政宗はりっぱな会社の社長。
小十郎は副社長。
忙しくて当然の役職だ。
そのせいか、デートもひと月に1〜2回出来ればいい方なのである。
今回は仕事の忙しさのせいで実に1ヵ月ぶりの再会だった。
その一か月は佐助にとって苦痛以外の何物でもなかった。
ただ会えないだけならなんとか我慢が出来る。
しかし、佐助には不安要素があった。
それは…恋人への誘惑だ。
この片倉小十郎という男。
第一印象はヤクザ?と疑ってしまうような面構えだが、一度話すとその見た目とは裏腹な内面が出てくる。
気はきくし、優しいし、学があって、センスもよい。
世の女性が虜になってしまうほどいい男なのだ。
だからこそ、佐助は会わない時間が不安で堪らない。
自惚れだが、好かれている自信はある。
けれど周りの大人の女性にとっては佐助みたいな小娘など障害ではなく、色仕掛けで小十郎を誘惑…なんてことがあるかもしれない。
小十郎がそれに引っかかるとは思えないが、万が一もある。
恋人よりももっと確かな間柄になりたかった。
恋人よりも上の関係。
それは夫婦。

プロポーズをしよう。

本当は小十郎からしてほしいのだが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
それに、男からプロポーズしなくてはいけない、などという法律はない。
もう自分から事を起こすしかない。
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