政宗×幸村

□仕方がない。
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仕方がないで片付けられたら、どんなに楽だろう?




水溜り…違う。
色は紅、匂いは鉄。
そこに佇む影が崩れ落ちた。

「…俺の勝ちだ………真田幸村」

膝をついたちょうどその前に、伊達政宗が名を呼んだ真田幸村の頭がある。
倒れた体を微かに上下させ、唇をかみ締めている。

「お、館さま……申し訳ありま、せ……ぐぅっ」

主の名を呼び、悔しそうに嘆く…呻き声は悔しさからか、痛みからか。
そんなものは定かではない。


勝ったのだ。
自分は勝ったのだ。
長きに渡る戦いの末、遂にライバルに勝ったのだ。
自分の受けた傷も半端ではないが、その両の足で立てなくなるほどの傷を負わせたのは政宗の方だ。

「…殺せ」

地に横たわる幸村が此方を見ている。
重傷なのにどうしてこんなにも目は燃えているのだろうか。
きっとこいつも武士だからだ。
俺だって同じ立場なら同じ言葉を発し、同じ目を向ける。

六爪のうちの一本を拾い上げ切っ先を幸村の首に添える。
後一撃…貫けば俺の完全勝利。
そして目指すんだ、天下への道を。

刃先が首の皮膚を捉えた。
紅い血が滲み首筋を伝い赤い衣を塗らした。
赤に紅。
分かりはしない。
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