元親×元就

□苦味の中の甘味
1ページ/3ページ

「…は〜、終わった」

大きく伸びをして首を捻ると、コキッと骨が鳴った。
パソコンの画面を見つめていた目が、鉛でも入ったかのように重い。
営業で外回りをするほうが何十倍も楽だと感じた。
今日は慣れないパソコンで、営業の報告書作成。
慣れないせいか、時間がかかってしまった。
窓の外を見れば、深い闇で覆われている。
腕時計を見ればもう10時だった。

「一体どんだけ作業してたんだ、俺…」

作業を始めたのは何時だったか覚えてないが、陽はまだ出ていたような気がする。
これくらいの書類を作成するのに時間をかけすぎた。
我ながらあきれて笑えてくる。
営業だけ出来ても仕方がない、そう言われた。

「やっと終わったのか?」
「おう、やっとな」

この人物に。
部屋に入ってきたのは同じ課の元就。
その手には資料室から取って来た書類のファイルがある。

「まだ仕事すんのか?」
「いや、明日の仕事に必要な部分だけ抜粋して帰る」
「そっか…あ〜、目が痛ぇ」

一つの眼球でしか見ていないせいか、疲労の度合いが半端じゃない。
いつもはクッキリ見えるオフィスもどこか霞んでいる。
愛しい恋人の姿も、淡く見えるんだから困ったもんだ。

「元親」

名を呼ばれてそっちを見ると、元就が近づいて手を差し出した。
差し出されたのは缶コーヒーだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ