元親×元就
□雨、与う
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ザーっと降る雨。
音が耳に心地よく、肌を撫ぜる空気は冷たく気持ちいい。
目にも鮮やかな紫陽花が咲き乱れ、美しい花と葉を露に濡らしている。
日本の風物詩である梅雨。
なんてことを全く思っていない人間がここに一人。
中国を収める毛利元就がそうである。
もくもくと業務をこなしているようだがどこか様子がおかしい。
いつもの元就らしくなくイライラしている。
窓の外を見てため息をつき、首を強く横に振り再び書物に目を通す。
しかしまた視線は窓の外へ。
「一体いつになったら雨は止むのだ…」
元就は日輪を崇拝している。
しかし梅雨の今、崇拝すべき対象は分厚い雲の上。
見えるわけがない。
ここ数日、雨が降り続いていて今梅雨真っ只中である。
一日や二日なら我慢できるがこうも続くと嫌気が差してしまう。
「当分止まねぇだろ。梅雨だぜ、梅雨」
「しかし…え?」
返ってくるはずのない返事が返ってきた。