元親×元就

□彼方の彼方−カナタノアナタ−
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元就は元親のアパートの前で苦い顔をして立っていた。
その表情を見る限り遊びに来た・・・と言うわけではなさそうだ。
元就は今日、元親に本を返してもらいに来たのだ。
随分前に貸して、返せ、と言ったのだが返す気配が全くない。
元親のことだ・・・元就は諦めて自ら赴くことにしたのだ。
インターホンを押すと『はい』と元親の声が聞こえた。

「我だ、扉を開けよ」
『元就!?』

部屋からドタバタ大きな音が聞こえた後、すぐに扉が開いて元親が顔を出した。

「どうしたんだ?元就がわざわざ俺の家に来るなんて?」
「本を返せ」
「・・・・・・・・・あ」

今まで本のことなんかすっかり忘れていました・・・そう分かる「あ」だった。
元就はやれやれと眉間にしわを寄せて手を差し出した。

「それがよ・・・昨日大掃除してさ、どこにあるか分かんねぇんだよ」

あはははは、元親は苦笑いした。
元就は元親の頭を思いっきり叩いた。いい音がした。

「貴様は何故そうも軽率なのだ!!」
「わ、悪ぃ!!ちょっと時間かかるけど探してくる!!」
「我も探す。入るぞ」
「も、元就!?」

元親の静止も聞かず元就は部屋に入った。
大掃除をしたばかりと言うのは本当らしく部屋は綺麗で塵一つない。

「多分押し入れか引き出しかに収めちまったみたいだ」

元就に続いて部屋に入った元親が説明するより早く元就は辺りを探し始めていた。

「何故日頃から部屋を片付けておかんのだ、馬鹿者」
「だってよ〜部活してたらそんな暇ねぇんだからさ」
「せめて部屋が汚くてもいいから人の物はきちんと管理しろ」

元就は不機嫌そうに元親に言われた通り押入れを開けた。
そこで元就はさらに不機嫌になった。
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