宝物小説
□今日は大切な日
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前田慶次は踊り出したくなるような気分で最愛の人の元へと足を運んでいた。
「利、気に入ってくれっかな?」
歌うように呟いて掌の中に大切に握り締めている贈り物へ視線を落とす。
今まで町で見掛けいいと思った物を贈ったことがあるが、どれも棚の飾りとなり
使ってくれた試しがない。
食べ物ならと、珍しいお菓子やらを持って帰れば喜んでくれはするものの・・・
「まつの飯はウマイ!だもんな〜」
お菓子を食べるときより嬉しそうな顔をするので一目瞭然だ。
ここ1月何を贈ろうかとばかり考えていた。
そして、今日になってやっとコレに決めたのだ。
「ただいま!利いるか?」
「お帰り慶次」
笑顔で迎えてくれた最愛の人に
すっと右手をのばし
「おめでとう!!」
きょとんとした表情の後嬉しそうに顔が綻んで幸福の色をなす。
「ありがとう。覚えててくれたんだな?」
忘れていた。
本当は・・・この顔だけで十分だと。
確かに、俺の贈り物を受け取るときこの人は笑っていてくれていたのに。
「利・・・」
「ん?どうした?」
部屋へと歩きだしていた利家は大切そうに俺の選んできた贈り物を持って振り返
った。
「・・・いや、なんでもない」
「おかしなやつだな。早くあがったらどうだ?今、餅を焼いていたんだ」
その笑顔が有る限り・・・