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□甘い蜜
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慶次は家路へ向かう砂地を歩いていた。
手には利家に頼まれたものを抱えて。
「ただいま〜。としー頼まれたもん買ってきたよ」
「おお、すまぬな慶次」
慶次を迎えたのはにこにこ顔の利家だった。
受け取ったのは小さな壺。
中身は水あめである。
利家がどうしても食べたいと言うので慶次が買ってきてあげたのだ。
(利家が自分で買いに行くと言ったのを慶次は全力で止めた)
「ったく…方向音痴自覚してくれよなぁ」
「何か言ったか?」
「いや、何でもない」
利家は首を傾げながらもまあいいかと再び壺に目を向ける。
子供のようにキラキラした目をしている利家を見て思わず慶次に笑みがこぼれる。
「買ってきてくれた礼に慶次にも食わせてやろう」
「お、ありがと」
利家は箸を二膳用意して机の上に壺を置き、その前に正座する。
慶次も利家の隣に座る。
「旨そうだな」
壺から水あめをすくいくるくる混ぜる。
色が白っぽくなったら完成だ。
利家は水あめを口に入れて満足そうに笑った。
「ん〜、甘くて旨い。ほら、慶次も食べろ」
「んじゃ、俺ももらおっかな」