日々草

□はち
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ふわり。

暖かい風からなにかが心地よく微かに香る。


春だなぁ。

他に考えるべき事はたくさんあるのにどうでもいい事を考る。




「あーっ!!やっと来られたんスか晋助さ、ま……ア、アァアンタ誰っスかァァァ!!」

「な、ななな……!?」


するといきなり断末魔に近い質問が聞こえたかと思えば私の視界はがっくんがっくんと揺れて青い空が雲の白と混ざりあった。

両肩が悲鳴を上げているところをみれば
――あ、揺さぶられてるんだ。



そう察した。

声的に女のコ。ならば良し。
良くないだろ、とかマヨラに言われそうだけど良し。揺れすぎて気持ち悪くなってきたけど良し。

「答えろっス!!」

……おえ、本当に視界ブラックアウトしそう。




「来島、止めるでござるよ。目を回しておる」

「ハッ!」



まだ誰かいたんだ。まぁ見る暇無かっただけなんだけども。

あら、まだちょっとぐわんぐわんする。これが千鳥足?
……違うか。


「足元が覚束無い様子でござるな」

「あ、意識ははっきりしてるんで大丈夫です」

「そうか」

「目ェ回ったままなんスけど」
「マジでだいじょ……可愛い」

「は?」

「可愛い……!可愛い!!」

「ッギャー!?」



目の前に広がった金色。
それは最初肩を揺さぶってきた女の子のもので、その女の子がなんとも……可愛かった!!

思わずハグ。だって私の本能が……!


「お肌つるつるでメイクもばっちりだしなんか良い匂いする!!」

「なななっ、何なんスかコイツ!!?」

「女の子を愛してやまないただの一般人です!!」

「変態じゃないっスかァア!!」

「そんな事な、い!!」

「なんでどもった!?なんで躊躇したんスか!?うっ、くるしっ……!まさかさっきの仕返しっスかァァァ!?」

「仕返しなわけないじゃーん!むしろまだやってもらってもいいよ!!」

「え」

「や、違う、ソッチの意味じゃなくてね、」

「晋助様助けてェエ!!」

「聞いてよ!!」



それから暫く抱きついたままでずるずる引きずられたので離した。

ゼーゼー言ってる、ごめんね。

「……はぁ、で、アンタの名前は?」

「名乗るほどの者では、あ、ごめん。早乙女はるかって言うんだ」

「で、アンタは晋助様の何」

「まず晋助様分かんな、」

「ソコにいるフェロモンばんばんの麗しい緒方っス」

「えーっと……あの不良さん?私が聞きたかったなんで?」
「あぁあイライラするっスゥゥゥ!!何なんスかもう!!」

「私は可愛い女の子と話せて嬉しいよー」

「あーーっ!もう!!」



頭を両手でわしゃわしゃする女の子、キジマさん、だっけ?
「キジマさん、下の名前も教えてよ」

「えぇ……分かったっス。また子、来島また子っス」

「ふむふむ、また子ちゃんね!また子ちゃんはソコにいる不良さんが大好きなんだね!!」



そう言ったら声にならない声を上げて面白いくらいに顔が真っ赤になったまた子ちゃん。

隠してたつもり……は無いだろうけどやっぱ面と向かって言われたら照れるのかなぁ。

当の不良さんはハシゴ登って上行ってるから聞こえてはないと思うけど全力で聞こえてなかったか聞きに行ったまた子ちゃんの背中が愛らしい、和む。

うーん、恋してますねカッワイィ!






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