短編
□White Xmas……
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「あぁーー、さみぃー……」
「っるせぇなぁ総悟、寒ぃのは同じだろーが」
12月25日、
見慣れているはずの江戸の景色も、
いまでは一面真っ白の銀世界。
俺と総悟は何時もの様に市中の見回り中。
昼間は天気が良かったので空には沢山の星が光っている。
そしてそこからは終始、はらはらと雪が俺達の上に落ちてくる。
「おらっ、総悟、屯所では近藤さんたちが宴会の準備してんだから、早く帰っぞ‼︎」
「へーーィ。」
俺達は仕事を終え、雪を踏みしめた時の独特な音を鳴らしながら家路に向かった。
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『メリーーーーXmas〜!!!!!』
バーーン!!とあちらこちらでクラッカーの音が鳴り響いた。
「こ、近藤さん…なんだその格好は。」
『がっはっはっは! トシ!総悟!
お疲れー!
これはなー、あれだ、アレ。
サンタクロース!!!!!」
「いや、違うと思う。」
近藤さんは真選組の夏服みたいに、袖の部分は破れ無くなり、前はボタンも閉めずにガラ空き状態。
とてもサンタとは言えない。
それから宴会は3時間くらい続いた。
ただ、年輩の隊士達は近藤さんと朝まで飲むつもりだろうが。
総悟は酒には全くもって強くない癖に、大人達に張り合って飲み続けていた結果、誰よりも先にぶっ倒れたので俺が寝室まで運ぶことになって今に至る。
一度目を覚ました総悟は布団に潜ってまた寝ようとしたので、俺は風呂ぐらい入れと怒鳴り散らし無理やり叩き起こした。
暫くして、風呂から戻って来た総悟は寝巻きに髪はビショビショのまま、裸足でぺたぺたと部屋に入ってきた。
「総悟てめぇ…小学生じゃあるめぇし、髪ぐらいちゃんと乾かせ!!」
そう言って俺は、細く柔らかい総悟の濡れ髪をタオルでガシガシと乾かす。
もっともっとコイツがチビだった時、よくこんな風にやってたな、なんて考えたら、無性に愛おしくなった。
「総悟…。」
俺は手を止めた。
「…?。」
「今年の冬も……、
……お前の…、総悟の、顔が見れて、
…本当に良かった。」
総悟は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐにまっすぐ俺の眼を見てきた。
「本当でさァ。
…こんな…、こんな、今日明日死ぬかもしれねぇよーな仕事に就いてやってるだけ…ありがてぇと思いなせェ…。
土方さん。」
彼も言葉に詰まっているのが分かる。
俺はそんな少年を優しく抱きしめた。
不器用な俺達にはまるで似合わないクリスマスの夜。
でも大丈夫。
今は雪が隠してくれるから。
merry xmas……