短編
□隣に居るだけで。
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7時間目
死んだ魚の様な目をした国語教師による、雑談90%の意味のない授業が終わる。
俺は掃除なんかは常識みたいな顔をして堂々とサボる。
「帰るぞ。」
「…ヘィ。」
コイツは沖田といって、学年で1、2位を争うほどの馬鹿。
そして、
ドSで我儘で生意気。
まぁしかしクラスの女子曰く、高2の男子にしては小柄な体格であったり、いつまでたっても童顔なベビーフェイスはなんとも可愛いそうだ。
…というか、他からみたらルックスぐらいしか良いところが無いだろう。
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でも、俺は知っている。
総悟の良い所も。
悪い所も。
そして、
過去も。
総悟の両親はコイツが産まれてすぐに帰らぬ人となった。
姉貴と二人暮らしをしていた総悟だったが、その姉は人より身体が弱く、病気がち。
毎日毎日姉の看病をし続けていた総悟の献身的な姿に俺は惚れた。
…しかし、総悟は報われなかった。
姉貴は先週亡くなったからだ。
…守らなければならないと思った。
そばに居てやらなければならないと思った…。
だから…
先日、俺はその想いをすべて総悟に伝えた。
幼馴染だった俺たちは何事もなかったかの様に通学路をチャリで帰る。
いつも通り、俺の自転車の後ろに総悟が座る。
「ちゃんと掴んどけよ。」
「…分かってまさァ…。」
細い指が俺の制服を握りしめる。
「手ェ…震えてんぞ。……
……怖ぇか…?…一人になるのは…。」
「………いえ……。
あんたが……居るから。」
ーーーあんたが…俺のそばに居てくれるから
怖くなんて、ありやせん。