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07/27(Fri) 18:02
雪柳のYukiです。
Yuki
雪柳のYukiです。うちのサイトURL:http://id32.fm-p.jp/493/snowrabbit37/
イギリスにあるとあるテニスコート。
そこに6歳くらいの小さな少女がいた。大きなラケットを一心に振り続ける少女、花音。
彼女が立つきちんと整備されているテニスコートには多くのテニスボールが散らばっていた。
花音は流れる汗も気にすることなく何度もボールを打ち付ける。その度にダンッという音が響いた。
「花音...」
「パパ?どーしたの?」
花音は名前を呼ばれてそっと顔を上げる。そこにいたのは父親である大河。
花音は顔をつたう汗を腕で拭う。
「体壊すぞ」
「大丈夫だよ?」
全然元気だもん!
大河の忠告を花音は否定する。彼女は己の父親を安心させるようににっこりと笑った。
「何で、そんなに頑張ってるんだ?」
だが、大河にそう問いかけられると花音は笑顔を消して俯いてしまった。
「今日ね、負けたの……」
絞り出すように俯いたまま花音は呟く。
悔しかったのだろう。
花音はぎゅっと小さな拳を握りしめた。
大河はその頭を優しく撫でる。そして、
「3つも上の男の子だろ?」
と諭す。
だが花音は首を振った。
「でも、悔しかった。だから頑張るの」
花音は俯いたままそう悲しげに言う。
その言葉を聞いた大河はため息をついて花音の頭の高さまでしゃがんだ。
「なぁ、花音。テニスは好きか?」
「あ、うん」
突然の質問に思わず顔を上げて答えた花音。その返事を聞いた大河は満足げに笑う。
「テニスは楽しいか?」
「うん!」
「なら、大丈夫だな」
大河はふっと笑って再び笑顔を見せた花音の頭を撫でた。花音もされるがままに撫でられていたが、しばらくして、
「……だいじょーぶ?」
と、首を傾げた。
大河はもう一度ふっと笑って、
「あぁ、大丈夫だ」
と、そう繰り返す。
花音は納得できないのか何度も「何が?」と繰り返し質問する。それでも大河は笑いながら花音の頭を撫でて「大丈夫」と繰り返した。
しばらくその遣り取りが続いたが花音が諦め、むすっと拗ねて再び練習に戻っていく。
大河はそんな花音見つめて笑みを深めた。
花音がこの言葉を理解するのはもう少し後のことであるーーー。
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