忍跡

□snow soundout
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降り積もる雪と共に

消えていく  君

手を伸ばしても 儚く消えてしまう


─ snow soundout─




静かな夜の住宅街に降る、映える雪。


それが一番愛しいアイツに見えて少し目を細める。

翳した手に乗る儚いヒトカケラ。






“なぁ、雪ってどうして綺麗なんだろうな?”


雪を集めて、不思議そうに俺に問う
アイツはとても綺麗で…


雪と同化していた。


“お前の方が綺麗やで”


って言ったら、アイツは照れて俺に雪を投げつけた。


それが、ついこの間だと言うのに…


なぁ、今お前はどんな音を聞いてる?


答えはもう帰ってこない。


冷たくなったアイツの身体に呼びかける。

苦しいって辛いって言ってや

そしたら、俺が迎えに行くから。
どんなところでも。

なぁ、なんでお前は俺を置いて行ったん?




俺を置いて行くなや…




俺達、いつまでも一緒やって約束したんに…





“景吾、一生愛してるで”


“じゃあ、一生離すなよ。侑士”





なんで、守れなかったんや。




きっかけは些細なこと。
雪のスリップ事故。
俺が引かれそうになったところをアイツは俺を庇った。

雪が降ると共に消えてくお前の命。


俺はお前を景吾を抱きしめて名前を呼びかける ことしかできなかった。


何が医者の息子や


大事な時に大切な人を守れんかった。


頭が真っ白になって、気が動転して


見えるのは雪の白に映える紅だった。


その後、救急車を呼んだけど 手遅れだった。


病室に置かれる亡骸。
景吾の両親は俺を気遣ってくれたのか、二人に してくれた。
俺は一日中景吾の隣にいた。


窓の外には雪が粉の様に降っていた。


俺は景吾を抱きしめながらみていた。
段々冷たくなっていく身体。
信じたくなくて、呼びかけた。

なぁ、俺を呼んでや。


俺の声で仕草でまた笑って?

そんなことはもうできないのにな。

縋りたくなる

もしや、寝てるだけで生きてるんだって思いたい。



俺を驚かしたいだけかもしれへん。


ロマンチストの仲間になって
俺がキスをするのを待ってるかもしれない。


そう思い込んで冷たい唇にキスをした。
けど、冷たくなったままで…


もう、お前は戻らないと再度知った。


神様。


俺の全部をあげるから





景吾を





アイツを…




もう一度…




そう思っても、できないことはわかってる


だから…




俺も死なせて…?




俺は涙を流した。


死にたくなくて流してる涙やなくて





景吾への涙。







これからも一緒や 一生…




一生


俺は日頃携帯している睡眠薬を取り出した。


確かこのバックには3箱あったはず。

俺はそれ全部を飲んだ。
知識はある。
これを大量に飲むと死ぬっていうことくらいは。


俺は景吾の隣に横たわった。
そして、手を繋ぎ抱きしめた。



“愛しとる”



愛の言葉をいい、俺は瞳を閉じた。

君のいない世界では

俺の存在価値なんてない



君がいるからこそ

俺が成り立つ






だから、君と一緒に朽ちていくよ









白い白い雪の下で

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