皇毅夢「香黄葵」

□陸家之茶技
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―――――「点茶芸とは、簡単に申しますと、団茶(茶葉を粉々にして固形にし、乾燥させた物)を挽いて粉末にし、その粉と湯を茶碗に入れて掻き混ぜる事です。陸家では団茶と呼びますが、他に餅茶、固形茶、緊圧茶とも呼ばれています」


茶荷(器)に入った団茶が、各々に配られる。


珍しい茶葉の形態を見て、葵家の子供達は思い思いの感想を述べた。



「ふぉおお〜。固まってます! これが、お茶ですか?」


「ちちぅえー、たべれますかぁ?」

「……駄目だ。食うな」

「はぁい……」



清雅は、これから使う茶具を子供達に見せて、説明した。


「では、基本ですが先(ま)ずは炭の選定からです」


紹暉が挙手して清雅様!と呼ばう。


「――どうぞ、紹暉殿」

「良い炭は、炭同士を打ち合うと、澄んだ音がしますっ」


「……大変宜しいですね。その通り、御明答です。炭は風炉に合う大きさに砕き、事前に用意しておきます」


紹暉は老師(せんせい)に誉められて、嬉しそうにテレテレ笑った。

皇毅がそんな顔で笑った所を清雅は未だかつて見た事は無く、元上司の息子を通して、幼い日の皇毅様を想像した清雅は、漏れそうな笑いを堪えるのに必死だった。


ちっちゃい皇毅様が、阿呆面で、ヘラヘラ笑っている……!!

………その事実が清雅の口元をワナワナと震わせたが、彼は意志の力で平静を装う。


無邪気な幼子は可愛いが、これが、ン十年後には隣の父親そっくりな感情の乏しい鉄面皮になってしまうのだろうか…?


……どんな大人になるのか、楽しみだ。


清雅は頭の片隅で、そんな事を考えながらも、古式点茶藝の講釈は流暢に続く。
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