皇毅夢「香黄葵」

□陸家之茶技
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雪晴れの中、明るい日射しが照壁(門扉の奥の壁)の前に積もる雪山に反射し、目映(まばゆ)い輝きを放つ。


轎庁(車止め)で軒車より降りた陸清雅は、その光景に思わず目を細めた。


葵家の家人に導かれ、
二門を通過した清雅は、雪吊が施された見事な松柏を横目に游廊(渡り廊下)を渡る。


長い游廊から外院(中庭)を望むと、壁で日蔭になった箇所などは、白い雪に吸い込まれた陽光が、空の色を地表に反転したかの様な青灰色の陰影を付けている。



庭の雪山が不自然に盛り上がっており疑問に思ったが、回廊を曲がると、それは直ぐに解決した。


雪山は入り口が掘られた雪洞(かまくら)の態(てい)を為していたからだ。


更に雪洞(かまくら)の前には雪人(雪だるま)が作られており、末広がりの円錐形の体の上に丸くて大きな雪玉が載る。

氈帽(フェルトの帽子)を被った頭部には胡蘿蔔(人参)の鼻に石の目、小枝の口、なだらかな傾斜の体には、菷(ほうき)が二本刺さっていた。



そんな中庭の様子を認め、清雅の口元は思わず綻んだ。



軒廊(渡り廊下)の脇の洞門(大きな丸穴の出入り口)を潜り、キレイに除雪された小路を歩む。



踏みしめた雪がぎゅうと鳴る。
鳥の囀(さえ)ずりに気付き、ふと樹木の梢を見上げれば南天の実の鮮やかな紅さが雪景色に良く映えた。
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