魂導く灯の偽物
□第一話
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《起きろよ、鬼》
──だれ
《鬼火だ。》
──私のなかに入ったんじゃないの?
《お前の中に居るさ》
飢餓で死んだダルさから、体を起こせず地面と愛を育んでいると鬼火から呆れ声があがる。
《…お前って変わってるよな。》
──よく言われるよ。
特に前世では。
つか前世でしか言われてない。
《………そろそろ真面目に起きたらどうだ。》
──うん、そうするよ。
むくりと体を起こす。
あたりは湿っていた。
──雨、降ったんだ。
特にお祈りもしてないのになぁ。
《お前が爆睡こいてる間に、人身御供やぐらから降ろしといた。》
いまごろ村人は盛大に喜んでるんだろうな。
──あいつらの死後、取り敢えず30回くらいは死んでもらおう。
そうして私はその場を離れる。
「アレ、鬼がいる。
どっから来たの?
黄泉はあっち。」
『…あの世ってあるんですね。」
《あるさ。鬼火があるくらいだからな》
「ええ、こっちです。」
私はこの小さい人に聞いたのに、どうして鬼火が答えてるのさ。
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ここはあの世。
あの小さい人(木霊さんというらしい)に案内された先ですたすた歩いていた。
「あれ?見かけない鬼が来た!」
「どっから来たんだ????」
『現世から来ました」
「へぇー」
黒髪もじゃもじゃの、いかにも鬼らしい外見の少年と
まぁまぁ直毛の染め毛の鬼の少年が寄ってきた。
《マセてやがんのこのガキぃ〜》
語尾にWマークが付くのでは、というレベルの笑い方が頭に響いてガンガンする。
──頭痛いから笑わないでよ
《いやァ〜悪ィ悪ィ〜》
「名前はなんてーの?」
一瞬現世の名前を言いかけて口を閉ざした。
──死んだ名前は捨てよう。
『………、丁です。
あなた達の名前は?」
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あの世に来て早くも数日が経過。
そんなある日。
「坊や達、何かあの世で困ってることはない?」
巨大寸胴の大男が現れました。
──でっか。
《こりゃァまぁ、でけぇなァ…》
鬼火と頭のなかで会話していると、蓬さんが現実で会話し出したので耳を傾ける。
「亡者がやりたい放題だよ…」
それに対する巨大寸胴の大男さん。
「やっぱりそれが一番困るよねぇ…」
──あ、ここアレだ。原作の五巻だ。
鬼灯の冷徹って、読んだの高校生の時だからもう忘れかけてるなぁ…
──そうなると言うべき台詞はただ一つ。
『黄泉を幾つかずつに分けて、亡者の生前の行いによって
住む場所を変えるというのはどうでしょうか。」
「…なるほど。
へぇー君、名前は?」
『丁です、人と(意思の強いヤツ込み)鬼火のミックスです。」
そういうと考え込む巨大寸胴大男。
──てゆうかこの人閻魔様?閻魔様かな?
アニメ放送の時、大学受験とバイトとで見逃してるからどんな声か知らなかったけど、こんななんだ…。
「“丁”って召し使いのことじゃないか!
改名しなよ。」
簡単に言いますねアナタは。
「あ、鬼火に丁なんだから“鬼灯”てのは?」
『鬼灯は、ダメです。」
「どうして?」
『私じゃない、ここにいるはずだった人の名前なのです。
だから私は鬼灯にはなれない。」
──鬼灯様は鬼灯様、私は別の何かだから。
「んー…と、あ。
じゃあ女の子の鬼ってことで鬼百合ってのは?
流石にそう何人もダブった名前無いでしょ!」
『それにしても凄い髭ですね。(ブチブチッ)」
「ぐふぅ、!?
なにこの子!?」
大きい男の人って面白い。
トトロみたい。
「もうあと100年もすれば黄泉は変わるよ
みんな手伝ってね?」
『固定月給、出来高払いで」
──鬼百合か、よし採用。
今もなお、髪で遊びながらそう切り返しておく。
今時不安定な給料じゃやってけないでしょうに。
──それは前世か。
《お前本当に変わってるなァ。
前世持ってるって知ったとき驚いたぞ。》
──そういえば私に入ったときに気づいたの?それ
《入ってから気付いたもんだからさァ、焦ったよ。
気付いたときにゃ同化してたけどな。
相性は最高らしいわ。》
──それは悪ぅござんした。
「じゃあまたね!」
ふと意識を現実に引き戻すと巨大寸胴大男、基未来の閻魔様はドスドスと去っていった。
『随分と大きな人でしたね。」
「うちの親よりでかいよ…あれ」
「ばっか!蓬!」
「あ!」
『まだ気にしてるんですか。
あなた達は。
私は親がいないことを気にしてはいませんよ。
むしろ回り回って羨望もありません。」
「…でもさぁ、」
『でもだってじゃありません
気にならないものは気になりません。」
ふと視線をやると近くの家で、夕餉の準備でも始まったのか良い匂いがしてきた。
『ほら、そろそろ夕餉です。
烏頭さんも蓬さんもまた明日です。」
「あ、丁、今日」
『さっきの。」
「……??」
『あの大男さんの案を採用しようと思いました。」
意思が伝わらず首をかしげる二人に少しだけ笑って、
『私は今日から鬼百合です。
百合と呼んでください。」
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(鬼百合と鬼灯は違うから。)
(鬼灯は彼の名前だから。)
→ねくすとアトガキ