短編
□機械に恋したボギー
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例えばあいつが人間だったとして、笑うのかなとか。
例えばオレが機械だったとして、それでもあいつを好きになるのかなとか。
『ボギー様』
「あ?」
わかりやすい機械の音声に振り向く。真顔のそいつに…いや、顔なんて言えるもんはねーな、アイカメラが人間っぽく二つついてるだけだ。
ちき、とそのアイカメラがオレを見て、音を立てる。その機械音にどこか心地好さを感じて、少しだけ視線を下げた。
『調達された食材が届きました。』
「ん。」
合成音声の僅かなノイズにも頬が緩む。こりゃいよいよ末期か。
立ち上がる。静かになった部屋に、機械の動く音が響く。ふとそいつを見ると、アイカメラがこちらを向いた。
『何か』
「ん、なんでもねーよ。」
かくりと首を傾げるとか、人間らしいことは一切なし。ただ感情の無い音声が発されて、つい笑んだオレはそのまま仕込みに向かう。
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どれかと言えばあいつは比較的古い型のヒューマノイドだ。人を楽しませるだとか見目が麗しいだとかそんなことは一切無い、ただの機械の一端にすぎない。
効率よく、コストも下げ。一番見目は低クオリティだ。髪こそあれ、誰も手入れをしないからあまり意味を成してない。
いっそのこと切ってしまえと言われたほどに、あいつは機械だ。
女性型ヒューマノイドとなっているが、それがわかるのなんて音声くらいのものだし、胸なんて無い。
音声が出れば問題はないから口も無ければ鼻も無い。突起物はことごとく邪魔なのだ。
アイカメラの瞼も閉じてしまえば一見のっぺらぼうになる。スリープ中の時を見たことがあるがあれは笑った。
そんな古いあいつだから、“ココロ” なんて機能は無いし、発現もしないだろう。オレのこともメモリに記録されてる“ボギーウッズ”としてしか知らないはずだし何かを思うことも無いだろう。
それに心臓がぎゅっと握られたような痛みに襲われる。オレは最近おかしいんだ。
こんなことを辛くなるのもわかりながら考えて、馬鹿みたいだと思ってもやめられない。四六時中あいつのあのアイカメラが頭をちらついて、離れない。
笑いかけちゃくれない。メモリの中の記録でしかオレを見ない。“好き”なんて感情も知らない。そもそも感情を知らない。
オレを見て意識して特別に考えるだなんて、そんなことはありはしない。有り得ないのだ。
「何を何時までも期待してんだろうな。」
自分でも馬鹿馬鹿しくて、けど泣いて喚きたいくらいには、オレはお前を想ってるよ、馬鹿みたいだろ。
そんなことも、お前はわからないな。
プログラムの中で出会って進化もしない関係か
(あいつは機械、おかしかない。おかしいのは、オレなんだ。)
ヒューマノイドネタが好き、何故ならロックマンファンだから、
2013/11/16