少女は捕食者が苦手
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グリンパーチ様が長期の任務に出かけてしまわれた。何だか寂しい。やっぱり刷り込み現象だ。この組織のこの本部にグリンパーチ様がいないことがすごく寂しい。
そんな私を元気付けるかの如くニトロくんはよく擦り寄るようになった。心配かけてるのかな、ごめんね。
暫く前から仕事をしてる第6支部で私は小さく笑う。ニトロくんの頭をぽんぽんと撫でてあげながら、それでも込み上げる寂しさに自分を不甲斐なく感じる。
はぁ〜なんて溜め息を吐くと後ろから声が飛んできた。肩がつい跳ねた。
「伊織!」
「ひっ!!」
「お、ワリ。なんかザラギラとグルが呼んでてさ、」
「…ザラギラ様に…グル様…ですか?」
「うん。食品管理室長とスカウトマンなんだケド。なんかニトロがどうとか…あ、いやそいつじゃなくてね?」
「…ニトロ…?」
ニトロ?ニトロのことで、私が呼び出される?
ニトロくんと顔を見合わせて、きょとり。ええと、なんで?
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「へェ、お前が伊織か。」
「え、と、」
「伊織、頼る気持ちはスッゲ嬉しいんだケド。ズボンは掴むのやめて?」
「え、」
「…んな顔すんなよ、あーもう…。」
ぎゅう、とセドルさんのズボンを掴んでいたら拒否されて、でも離したら心細いから勘弁してくださいの意味で見上げたら目線逸らされた。うう、勘弁してください。
目の前にいるのは食品管理室長のザラギラ様、スカウトマンのグル様。いかにも人外。しかして意思を持つ人。私にはちょっといやマジで怖い。
セドルさんのズボンを掴む手に更に力が入る。そんな私のもう片方の手を、ニトロくんがぎゅっと握ってくれた。
「…セドル、こいつ大丈夫なのか?」
「大丈夫、直に馴れるから。」
疑うグル様にセドルさんが苦笑い気味に言う。大丈夫じゃないです。私は何をさせられるんですか。
「じゃあ、頼み事の話するな。」
「た、頼み事?」
「こいつらの面倒を見てほしい。」
そう言って後ろを親指で指差したザラギラ様に視線を彼等の後ろに移す。
後ろにあったのは檻。それらは一つ一つが広い。そしてなんとも…固そうだ。それから、何かを思い出すような、既視感がある。
目を凝らす。檻の中で目が光った。…え、まさか、この膨大な数の檻に、一匹ずつ、いるというのか。
「…これ…全部、」
「ああ。ニトロだ。」
「動物に好かれる体質なんだろ?」
言われた言葉に呆然唖然。来る大戦に使うとか、色々と言われたけど右から左へ流れていく。
…私が一人で、この子たち全部、面倒見ろ?
さぁっと血の気が引くのを感じた。
ああなんてことだ
(セドルさん、代わってください、)
(オイラじゃ無理だって。)
私でも無理ですよ!!!!
2014/02/09