少女は捕食者が苦手
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「なんか伊織乗せてっとこいつ嬉しそうだわー。」
「そっ、そうですか?」
「うん。ところで大丈夫?」
「あ、はい、」
「いや、大丈夫に見えないし。ちょっと手、貸して。」
「え、は、」
「早く」
「はい、」
現在移動中の猛獣の上。この子にもセドル様曰くなつかれたらしい。
そんな猛獣なわけですが。とりあえず風が強い。必死でしがみついてる。落ちたら確実に死ぬ。
その私を見かねてかセドル様が手を差し出して。有無を言わさず掴まされる私。うわ、手でかい。
「す、すみま、うわっ!!」
「よっ、もうちょっと寄れる?」
「う、え、」
「あ、顔さっきまで真っ青だったのに今度は真っ赤だ。」
掴んだ手から引き寄せられてすぐ隣に座らせられる。背中の真ん中辺りに手があって、もう片方の手がまだ手を掴んでる。
「後ろに居られるより横に居られた方が支えやすいんだよね。」
「す、すみません、」
「ヒャハッ、伊織、ここはすみませんじゃないんだな〜?」
「…ありがとう、ございます…?」
「うん。そ。どういたしましてっ!」
にぱっと笑ったセドル様に、この人は悪役かと疑いたくなる。変な人。
そして距離が近い、それが恐れ多い。同時になんだか恥ずかしい。
ぎゅ、と服を握る。会話が無くなった。何か言わないとかな。
あ、そうだそういえば。どこに向かってるんだろう。そろっと視線をセドル様に向ける。
「ん?なに?」
うっ、流石は支部長レベル、反応のお早いことで…。
こちらを向いて薄く笑ったセドル様につい作り笑いが出る。
「あ、えっと、」
どこに向かってるんですか?
…あ、声が出ないこんな時に。そうだ、視線逸らそう。少しはよくなる。
すっとセドル様から視線を外して前を見て口を開く。
「どこに、向かってるんですか?」
言えた。
「第6支部。」
「…え」
つい逸らした視線を戻す。セドル様は前を向いてにやにやと笑ってた。
絶句
((…なんで?))
ほのぼのを目指すせいで別人
2013/12/07