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水音と、息を吐く度に出る泡の音に混ざって、言い合う声が聞こえる。

何かを隔てて聞こえるそれは、その何かが厚すぎるのか、よく聞こえない。


「(誰?)」


ぴしり、とヒビの入る音がして、水が出ていく。

言い合う声が止む。

目が開く。覚める。

透明なその厚い何か越しに見た男二人が、驚いたような、この世の終わりの絶望のような、顔をした。


「だれ?」


絞り出された声に、息を飲む音がした。

分厚い何かが割れた。

地に足がついたとたんに、何もわからなくなった。


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卵が割れて、マルが生まれた。くっそ、腹立つ、さっきの今までボギーと言い合いしてたことが腹立つ!!

静かになった部屋の中で、マルがこっちを見る。その目は、まるで、マルの故郷で見た像のように冷たくて、背筋が凍る。

意思なんて無さそうな顔で、目にオイラは映ってても認識されていないような。

そんな気分にさせられる目。


「ボギー」

「んだよ」

「…今さら不安になってきた。」

「やれよ、やるって言ったんだからやれよ。」

「わかってるよ!!」


そこで指くわえて見てるんだな!!と吐き捨てれば舌打ちされた。腹立つ。

少し前に出てマルを見ると居ない。アレ?なんて思ってるとボギーの声が聞こえて頭に衝撃。お?これなんてデジャヴ?

マルの華麗な足技によりオイラは壁にどーん。痛ってぇマジ痛ってぇ。

出会った頃を思い出させるその蹴りに、オイラマゾじゃないケド笑みが湧いた。













初心に帰るとはまさにコレ。


(ひ、ひゃは、いた、痛い、)

(セドルーッ!!ついに頭イカレたか!?)

(おいふざけんな殺すぞ)













なんでもしたげるよ



2013/11/30

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