有益に利用したい

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『ウッソ、マジデ?コレ全部隠レテタワケ?』


城(?)から出ればいつの間にやら活気のある大通りに早変わり。先程まで人っ子一人居ないしんみりとしていた通りが今や大声飛び交う市場である。


「皆漁から帰って来たんだ!」


一番年下と思われるちっこいのが笑顔で言うと、オイラの隣の多分一番年上以外の子どもが蜘蛛の子を散らしたように走っていく。

お父さんだのおじさんだの、口々にでかい声で呼びながら、オイラの隣の子どもの制止も聞かずに人混みの中に消えてった。

成る程、全員隠れてたわけじゃないんだ。まぁだろうね。漁から帰ってきたのか。

にしても一人でも残ってくれててよかった。道のりわからないから全員居なくなられたら困るし。


『ソンジャ、案内ヨロシク。』

「え、あ、はい。」


しっかりと返事をして歩き出したそいつに、周りを見つつオイラも歩き出した。


--


「お爺ちゃん、います?」

「居るよ」

「入りますよ」

「はいはい」


白い扉の向こうから、やっぱり年寄りの声がして。

白い扉を子どもが開けばやっぱり年寄りがいた。


「漁の成果はどうじゃった。」

「上々でしたよ」

「ほうかいの。それで、そちらは?」

「お爺ちゃんの話聞きたいんだって。」


子どもが用件を言うとじいさんはきょとんとする。


「また珍しいのぅ…いやはや、見たところそれは機械じゃろ、わざわざそれでここまで来るとは…何の話が聞きたいんじゃ?」

『単刀直入ニ聞クト、マークガ記憶失ワナイ方法ガ聞キタインダケド。』

「マークとは、まさか」

『アンタラノ作ッタ英雄ノコト。』


驚いたような顔をして、何故知っているのかと聞かれる。オイラたちの組織に居ると伝えれば、また目を見開いた。じいさん、あー、目玉落ちる落ちる。


「記憶を失わない方法と言うと…?」

『定期的ニ消エルンデショ、記憶。』

「そう、作り物のリスクと言うか…」

『エ』

「は?」

『ア、イヤ、ナンデモナイ。』


作り物のリスク…情報には兵器としてって書いてあったケド、成る程乗っ取ったやつらがそう書き換えたとでも考えておこう。

そこから聞けば話はなんて単純明快。つまりは。


『マークト好キアエバイイッテワケ?』

「まぁ、そうじゃなぁ。」

『簡単デイイネ。ヤットマルヲオイラノモノニスル理由ガデキタ。』


理由なんて無くてもする気満々だったケド。でも有るに越したことは無いね。


「しかしそれには期間があってのぅ…聞くに、既に下半身は動かんのじゃろ、急がねばならんぞ。」

『ヘ?』

「体が全部動かなくなり、殻に籠る前に何とかせねばならん。」


…殻に、籠る?


『ジイサン、ソレ、ドウイウ意味?』

「体が動かなくなれば卵のような形の殻を形成する。その中で記憶を吐き出すのじゃ。」

『吐ク!?』

「そこから孵化してしまえば手遅れじゃぞ。生まれる前に殻を壊すか、形成する前に好きあうか。その段階まできておれば、その二つしかあるまい。」


…改めまして、これはまさか。













急がなきゃいけないパターンの奴だ!!


(アッ、アンガトジイサン!!チョッ、コノ機体置イテッテイイ!?)

(ああ、構わんよ)

(わっ動かなくなった…)

((すぐ近くの距離だケド、ひどく嫌な予感がする。))













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2013/11/28

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