少女は捕食者が苦手
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「オレの隣が伊織の部屋な、まァなんかあったら仕方ねェ、呼んでもいいぜェ?」
「はい、」
何もないことを願うしかない。怖い。
「で、そうだなァ〜家思い出すまでの間だしなァ〜。働いてももらわなきゃなんねェだろうし、動きやすいようにもしてやらねェとなァ。」
「…は?」
働くのは聞いてませんグリンパーチ様。
「とりあえず会議呼ばれてっし丁度いい、紹介してやるぜェ。」
「え」
紹介…!?まさか、会議って、あの、え、今度こそ死亡フラグびんびんです!?
というか人々の前につき出さないでくれ!!声が出なくなるじゃないか!!
「じゃ、行くか。」
「え、う、」
「どしたァ〜?」
少し狼狽えるとグリンパーチ様が心配してるのか私の顔の辺りで手を振る。
身長差のせいで屈んでて、なんか、くっそうなんで優しくするんだこの人!!
あ、駄目だ迷惑かけられん。部屋まで用意していただいたのに!!
「い、いえ。なんでもないです!」
「無理すんな?じゃ、改めて行くかァ。」
やっ優しい。泣く。
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ああ、最近味わってない緊張だ。心臓がバクバク鳴ってる。頭の中、真っ白になりかけ。
そんな私を露知らず。グリンパーチ様は会議の部屋と思われる扉を開く。その音が耳に響く。頭の中に残る。ギィって音が、頭の中でずっと鳴ってる。
張り裂けるんじゃないか、なんて思うほどに心臓が五月蝿い。やっぱ、どうしよう。駄目かも。
ほぼ無意識にグリンパーチ様の腰の布を掴んだ。グリンパーチ様は一瞬止まって、また歩き出す。
グリンパーチ様を掴んでない方の手で心臓の近くの服を握る。制服がくしゃりと皺になる。
「そう悪い奴らじゃねェぜェ?」
ふと、上から降った声にぱっと顔を上げるとにやりと笑ってるグリンパーチ様。いや、悪役ですよ、悪い奴らでしょう。なんて言葉は口からでない。
そしていつの間にやら…あの会議の現場に居て、横にいるジョージョーさんとか、とにかく全員から視線が向かってきてて。
またぎゅっと、服を握った。頭の中は、無論真っ白である。
死ぬより辛い試練じゃないか。
(…グリン様が、)
(誘拐…?)
(似合わなすぎて言葉も出ないぞグリン。)
(ヒッヒッヒ、まァ、聞けよ。)
ほのぼのは何処。
2013/12/03