少女は捕食者が苦手

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「見舞いの花ァ?いらねェんじゃねェかァ〜?」

「いえでもやっぱり、折角ですから…。」

「まァいいけどよォ?別に一人でジャックに乗ってってもいいんだぜェ?なついてるしよォ。」

「え、でもすりよられながら花は摘めませんし…。」

「…仕方ねェなァ〜。」


--


仕事があるから一緒に居れないと言って笑って帰ったグリンパーチ様。帰る前に頭を撫でられて少し俯かされた時顔が綻んだのは内緒だ。

それにしても近場にこんなに綺麗な花畑があったなんて…。というかこの花畑の近くに美食會があるなんて言われてもきっと誰も信じないだろう。


「結構広いし…。」


花冠も作れそうだな。と思ってそれをつけてるトミーロッド様を想像して笑う。なんとなくそういうのが似合うのは、そうだな、仮面外したスタージュン様くらいだと思う。

グリンパーチ様…は、うん。安定の似合わなさかなぁ。また吹き出す。私は何をしてるんだ。早くしないと…あれ?


「…いつ迎えにくるのか聞くの忘れた…。」


…わからないのでとりあえず。早めに用だけはすませよう…でも萎れたらなぁ。

「んー…まぁお昼前には迎え来てくれるかな。」


…来てくれなかったらどうしよう。


--


膝下丈ほどのシフォンスカートの中に足をすっぽりしまって座っている。

本当に小さな声で聞こえた歌に、そっと耳を傾けた。美しい旋律。それでも、聞いたことのない旋律。

上機嫌で花を摘むその女性は…知らない人だ。けれどこの危険区域で…しかもよく見れば年端も行かない少女だ。一体何故ここで。花を摘んでいるのだろう。

影から見るのも失礼な話だが、ああも上機嫌だと話しかけづらいというものだ。


「確かに綺麗な花畑だけど…だからって一般人が…?」


美食屋の類いには見えないし…でもあんなに上機嫌なら迷ったわけでも無いんだろう。

…けれど危険区域だし。一応側にいって話を聞いてみよう。


--


かさり。何かが動く音が聞こえた。それに肩が跳ねた。思わず振り向いた。

視界に写ったのは、見覚えのある、黒い…。


「…え」

「…やぁ、歌が聞こえたものだから。」


つい。そうもらしてにこり、と笑ってその人…ココさんは徐々に距離を縮めてくる。鼓動が早くなる。


「…あ、」

「僕は美食屋だ。君は?あ、いや、ええと…ここは危険区域だから気になって…。」


…ぱーどぅん?危険区域?

…ええと、グリンパーチ様?どういうことでしょうか!!!!!?


--


「上司のお見舞いに花束を…その話をしたらここにつれてこられたと…。」

「え、と、はい、まぁ…。」


どうしようココさん理解力ありすぎて有難い。よく私の説明でわかりましたね!!

しかし冷静になってみるとこれは不味いぞ大変不味い。グリンパーチ様迎えに来るんだった早くココさんどっか行ってくれ。


「君はここが危険区域とは?」

「え、し、知りませんでした。」

「…うーん、僕も珍しく依頼があるし…。」


あっそうなんだ。どうかお気になさらず!!と言いたいけどどうしたことか声が出ない。ああもう。


「あの、私、大丈夫です。」


やっとこさ絞り出した言葉はなんて根拠のない…。いやでも、とりあえずお仕事の邪魔をするわけには。


「…本当に?」


ですよね疑いますよね。


「大丈夫です。」


苦笑い気味に笑うとやっぱり心配そうな顔をするココさん。ごめんなさい早くどっか行って。


「大丈夫なら、いいんだけど…。」


少し納得してなさそうだけど引き下がってくれた。これは優しさなのか…。

ともあれ。


「お仕事の邪魔をしまして、すみません。」

「え、いやそんな。」


歌うのはもうやめよう。













貴方がいる方が大丈夫じゃない


(…沢山摘んだなァ?)

(え、そうですか)

(…それは?)

(あ、花冠は…グリンパーチ様にです。)

(…は?)

((ああ、どうしてくれる、この謎の罪悪感…。))













全くなんてこった。



2013/12/21

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