長編

□真由と恭也
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分かってはいるんだ。
「あっ恭也ぁ〜」
僕は普通の性癖じゃないって。
「恭也っ…やぁっいくぅ!」
「っ…」
「あぁあ!」
女とヤりながら自分がこんな風にヤられてるのを想像して感じてる事がおかしいって。
「恭也、もう行くの?」
「うん。」
「そう…つまらない男ね」
「つまらなくて結構。じゃあね」
誰か僕を満たして、僕を屈伏させてみて。


今日は珍しく授業に出た。先公からは相変わらず僕を見てみぬフリ
「ダルいなぁ」
全ての授業をテキトーにこなしたあとぼやいていると一人の女子が僕の所に向かって来た
「あの…山城君…クラス委員に入ってるから…。手伝って欲しいです。」
「ん?あぁ…勝手に入れられたやつね」
「あ…はい…」
勝手に決められてたからする必要ないし…なんなの?
「ていうか君、誰?」
「私は…桜田真由っていいます…。力仕事があるから手伝って欲しいんです。」
「断る」
僕は笑顔で断った
「えっと…後、私は担任の先生から山城君の更正も頼まれてるの…。」
「だから?」

「…とりあえず手伝って…。」
「断る。じゃあね〜。」
「あの!」
桜田さんが僕をひき止める。僕は条件反射的に振り払った。
「触らないでくれるかな?ウザいんだけど?」
「私は手伝ってって言ってるんです!」
「僕は断ってる。」
これじゃ平行線だな…はぁ…仕方ない僕が折れるか
「手伝っ…」
「分かったよ。手伝えばいいんでしょ?」
そう言ったとたん桜田さんは笑顔になった。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
へぇ…笑顔は結構可愛いじゃん。こんな無邪気な笑顔見せられたらまぁいっかって思っちゃうなぁ。
「で、何をすればいいの?」
「えっと…」
桜田さんは困ったようにある一点を見た。僕もつられてそっちを見たら確かに彼女一人で持てる量を遥かに超えてた。
「うっわ〜先公無茶ぶりさせすぎでしょ…」
「…これで山城に話しかけれるだろうって先生が…」
「あ〜いかにも脳筋の長倉がやりそうだね…」
桜田さんは僕の方を見て困ったように笑った。
「まぁいっか。」
「どうしました?」
「なんでもない。それより早く終わらそう。帰って寝たい。」
「フフっ…はい。」
「どこに持ってくの?」
「はい、選択教室の…」
その日僕たちは二時間ほどかけて荷物を運びきった
「ありがとうございます。手伝ってくださって。」
「手伝えって言ったのは君だよ」
「そうなんですけど…」
「それに敬語はやめようか一応同い年なんだし。」
「…でも…」
「でも?」
「なんでもありません」
「また敬語」
「う…」
ちょっとたじろいでる。
「山城君、からかわないで」
うわぁ…上目遣いきたよ。ホント、こういうのに弱いなぁ僕。
「ごめんね」
僕が謝りながら頭を撫でようとしたら桜田さんはその手をはたき落とした。
「っ…ごめんなさい!」
「桜田さん!?」
桜田さんは謝りながら走り去っていった。
「なんなんだ…?」
結局その日、桜田さんは戻って来なかった。
次の日、彼女は休んだ。
その次の日もまたその次の日も。結局彼女が登校してきたのは一週間後だった。
そして、放課後、彼女は教室から誰もいなくなってから話しかけてきた
「山城君…ごめんなさい」「どうしたの?って聞かないほうがいい?」
「できれば…。」
「じゃあ聞かない」
「ありがとう。」
彼女は弱々しく笑った。
「〜っ」
「きゃあ!」
僕は今にも彼女が消えてしまいそうで怖くて抱きしめてしまった。
「山城君…やめて…お願い…」
「君が悪いんだからね?」
僕は勢いでキスをしようとした
「やめっ…やめてっ、いやっ離してっ」
「うわっ」
彼女は僕からすり抜け怯えたように離れ、教室から出ていった。
「待って!」
前の事があったから彼女を追いかけた。
「ぇ…げほっ…」
彼女は廊下の手洗い場で戻していた。
「っ。ごめんっ」
背中をさすってあげたら少しましになったみたいで僕に謝ってきた。
「ごめん…なさいっ」
「気にしないから。僕が迂闊だったんだし。」
五分後僕たちは教室に戻ってきた。彼女は落ち着いていた。
「…」
「…」
「ごめんね桜田さん」
「いえ…すみません。こちらこそお見苦しい所を見せてしまって…」
「話してくれる?君が良ければ、だけどね」
「…はい…話します…全部…」
彼女の話はこうだった。
彼女には中学の時彼氏がいた。その彼氏は学校で一位二位を争うぐらいかっこよかったらしい。(きっと僕の方がかっこいい)その彼氏は最初は優しかったらしいがだんだん本性表していったみたい。桜田さんに無茶な事(下着無しで学校に来いとかかな?)を命令し始め、だんだんエスカレートしていったらしい。別れる二、三ヶ月前からDVが始まり別れる頃には桜田さんはもう、心身共にボロボロ。入院したくらいに。彼女の親が訴訟を起こそうとしたのを桜田さん本人が止めたらしい。(なに考えてるんだろうねぇ)それでは当然親は許さず、彼女の意向によって、転校か退学かの二托になって県外に転校したらしい。
「その男の名前は聞いても大丈夫?」
「はい…山田祐哉です。」
僕は彼女ほど優しくはない。そいつを桜田さんと同じように心身共にボロボロにしてやる…。
「山城君…物騒な事考えてる?」
「考えてないよ。ただ君はこんなに可愛いのにそんなことをするなんて許せないって思っただけでさ」
「…」
ふとみれば桜田さんは真っ赤になっていた。
「山城君…そんな恥ずかしいこと…」
「?…あぁ…可愛いっていうの?ホントの事いっただけだよ。」
「ホントの事って…私可愛くなんてないよ?」
「可愛いよ。」
桜田さんは真っ赤になってうつむいていた。しばらくしてから彼女は決心したかのように僕を真っ直ぐ見つめてきた。
「なに?僕の顔になんかついてる?」
「山城君…一つお願いがあるんです。」
「なに?さっきのお詫びになんでもするよ。」
「私を抱きしめて下さい。」
僕は笑顔を消して彼女を見つめた。
「さっき思いっきり拒絶してたのに?」
「さっきは…突然だったので…」
「前も頭を撫でようとしたら拒絶されたし…」
「それも…すみません…」
「それでもしてって言うの?」
「はい。試したい事があるんです。」
「…分かったいいよ。おいで?」
「ありがとう…。」
律儀に失礼しますって言ってから僕にくっついてきた僕は彼女を怖がらせないようにそっと壊れ物をあつかうかのように抱きしめた。そして、どれくらいの時間そうやっていたか…ふいに彼女が離れた。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。それで?試したい事は分かった?」
「はい。私は山城君なら平気になってきたみたいです。」
「…それはどう受け取ったらいいかな?」
「?」
「だから、自惚れてもいいのかって事」
「えっと…」
「僕は結構君の事好きなんだけど。」
「…わかんないです。…でも…その…」
「急がなくていい。焦らなくてもいい。君のペースで考えて。僕は君から好きって聞けることを期待してるから。」
「…はい…」
彼女は泣きながら頷いた。
それから僕は毎日学校に行くようになった。(まぁ遅刻はするけど)理由は携帯を持ってない彼女がいつでも僕に話しかける事ができるように。それでも授業中は寝るけどね。
僕から告白して三ヶ月後。桜田さんは僕に真面目な話があるからと放課後残った。
「それで話って?」
「…はい……ごめんなさい。」
「…それは何が?」
「山城君とは付き合えないっていうことです。」
「…それはなんで?」
「言えません…聞いたらきっと…」
「嫌われる?とでも続ける気かな?」
「はい…」
「嫌いになんてならないよ。大丈夫。僕は君の全てを受け入れる。」
「……私…実は…どエスなんです。」
「…。」
「やっぱり引きますよね…。」
なんだ…そういう事か…最初からこの子だったんだ
「…ククッアッハハハ!」「あの…?」
「そっか…そういう事か。いいよ。全然OK。」
「でも…」
「気にしないで。逆にそんな一面を知れて嬉しい位だよ。」
「でも…」
「さっきからでもばっかり。僕が気にしてないんだからいいじゃん。」
「…ふふっそうですね。」
「後敬語禁止、それと僕の事は名前で呼ぶこと。いいね?」
「は…うん。代わりに山城君…じゃなくて…恭也君も私の事名前で呼んでね。」
「わかってるよ。真由」
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