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□キス注意報
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奥様は魔法使い
〜キス注意報〜
些細な出来事だった
「奏さん…」
一肌が恋しくなる季節、万理は溺愛する妻にいつものようにキスをしようとする
いつもなら受け入れてくれるはずが
「今日はしません」
「えっ!」
ぐいっと頬を手で抑え込まれる
結婚して五年初めての出来事だった
「万理さん、今日は一人で寝ます…おやすみなさい」
「ちょっ…奏さん!!」
パジャマを着たままお気に入りの抱き枕を持って押し入れに行ってしまう
「ちょっ…奏さん!!」
結婚して初めての拒否
万理はがくりと項垂れ一人寂しく夜を過ごした
翌朝何食わぬ顔で出勤するも
いつものようなスキンシップはなし
‥‥というか避けられているような気がする
「バンちゃん、かなっち喧嘩したのか?」
「ちょっと環君!そんなあからさまに」
現在MEZZOのマネージャーをする万理は環と壮五といる時間が増え仕事の合間に様子がおかしいことを問うた
「…喧嘩はしてないんだけど」
「じゃあ浮気したのかバンちゃん」
「だから環君!!」
NGワードを繰り返す環を再度止めようとするが
「だってさ…かなっちがバンちゃんにくっつかねぇなんて俺が王様プリン食べねぇぐらい変だ」
「まぁ…毎日万理さんにべったりだもんね」
「バンちゃんにすっぽんじゃねぇかなっちはかなっちじゃねぇ」
(すごい言われようだな…)
さりげなく酷いと思ったが事実なので何も言えない
「本当にどうしたんでしょうか」
「うん…」
奏は大らかなのでよほどのことがない限り怒ったりしない
そもそも万理は空気が読めるので奏が怒るようなことをしないのだが、一体何があったのかと不安に思いながら半日を過ごすと
「ただいま」
「おかえりなさい」
事務所に戻ると事務作業をする奏
変わりなく見えるが若干そっけない
「今日の撮影でスポンサーにケーキを貰ったんだ…奏さんも食べない?」
渡されたケーキは奏の大好きなチーズケーキだったが
「食欲無いです」
「えええ!!」
普段から色気よりも食い気の奏がお菓子に目もくれなかった
「これから打ち合わせなので失礼します」
「奏さん!!」
万理を見ようともせず去っていく
いつもなら笑顔で行って来ますというはずなのに
本当に何かしてしまったのかとショックを受ける万理だった