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□拍手@
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――好きです、付き合ってください



これがすべての始まりだった


「あっ…あの、なんの冗談ですか?」


「冗談じゃないだけど」


告白の返事の第一声がこれかと内心がくりと項垂れる大神万理


「今日はエイプリルフールじゃなかったはずですが」

「いや、本気で」

「あっ…あの、私はマネージャーです」


「うん知っているよ」

にっこりと笑う万理に対して千景は困り果てる


元アイドルであり現在は小鳥遊芸能事務所を支える事務員の万理はとても優秀で非の打ちどころがない


十人いれば十人が振り返る容姿をしている

そのうえ面倒見がよくなんでもそつなくこなすのだが



「あっ…あの…ですね」

対して自分は年齢的にも若いとはいいがたいもうすぐアラサー突入の年齢だ



「万理さん、何か辛いことでも?自ら過ちを犯す必要はないのでは?」


「俺はいたって真面目で辛いことはないよ」


ガシッと手を握られる



「ずっと好きだったんだ…俺と付き合ってもらえませんか?」

「いや…落ち着いて!!万理さん早まらないで!!話せばわかる!」


なぜこうなった


人生でももっとも悩まし気な日となった




「くくっ…あははは!!」

「社長!笑い事ですか!」


事務所にて笑い声が響く


「くくっ…完全無欠の千景君もこの手のことは苦手のようだね?」

「申し訳ありませんね?何せ仕事人間でしたから?小鳥遊さん」

「懐かしい呼び名だ」


しきりに笑い続ける小鳥遊音晴をジロリと睨む


この芸能事務所を作りもう10年以上になる


「まぁ、頑張りなさい…今からでも青春を謳歌したら?」

「できません!」


この10年仕事一筋に生きて来たのに今更だと思ったが




「千景さん…好きです」

「今仕事中!!」

「丁度休憩時間になりました。問題ないですよね?」



万理はその日を境に千景に猛アタックをしかける




恋に臆病な千景に猛アタックする万理


この日、職場での鬼ごっこが始まった



逃げるのはマネージャー

追いかけるのは事務員


終わりなき鬼ごっこはどちらが勝つか誰もしらなかった
 

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