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昼にはまだ暑そうな秋色のお洒落をした少女たちのそばで、俺は歩を待っていた。
約束までまだ五分あるが、俺は自分が遅刻するのは嫌いだった。

歩に会うのはこれが三度目になるが、今日はどんな顔をして会えばいいのかわからない。
一度目は緊張でそんな余裕はなかったし、金を受け取った二度目も妙な興奮で余計なことを考えている隙はなかった。

歩は、なにも聞かずに八百万円を貸してくれた。
額が額なので正式な書式でないにしろ借用書を書いて歩に渡した。
その時初めて、歩は俺のフルネームを知ったくらいだ。

『宇野紳一郎…。紳一郎さんなんですね、本名。シンイチさん』

一度目に会った時、俺は終始ぶんむくれて、まともな口も利かなかったというのに、歩はよく借金させてくれたと思うし、俺もよくまた厚かましいことができたものだ。

俺はその金を川口に渡し、川口はその場で携帯から俺の電話番号や履歴を削除すると、何度も頭を下げて指定された場所に行ってしまった。
川口の身が心配だったので、せめてどこへ行くのか教えてくれと頼んだが、川口は口を割らなかった。

それから暫くして、川口の名前が新聞に載った。
社会面のほんの数行の記事だ。
『特殊詐欺をしていた男が自首してきた。他にも仲間が複数おり、警察は男の供述を元に捜査にとりかかっている──』
それだけの内容で、その後の経過は発表されていない。

八百万円がどうなったのかも、梶田がどうしたのかもわからないが、川口が無事に自首できたことだけはわかって、俺は少しホッとした。
川口がこれからどうなるのかわからなかったが、当分の間借金の返済などできないのは確かだ。

だが、いずれ自由の身になっても、金を返す余裕は期待できない。
だから俺は、初めから自分で返すつもりで歩に借金をした。

歩は
『返済は何年かかってもいいですよ』
と言ったが、一つだけ条件をつけた。

“利子として、完済するかシンイチさんに彼女ができたり結婚したりするまでの間、毎月、月に二、三回、僕とデートすること”

一応、利子も金で返したいと言ってみたが、歩は首を横に振った。
それでは金は貸せないし、元金の返済だけでも何年かかるか分からないのに、利子までなんてどうやって返済するつもりか──。
そう言われると、俺には返す言葉もなかった。
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