出会い系サイトで会いましょう

□6
3ページ/11ページ

気を取り直し、一般人と思われる女性にメールした。
翌日、サイトに設置された定型文の断りメールが届いた。
完全に無視されていた自分を思うと、返事があるだけ嬉しかった。

次に出したメールには、丁寧に自分の言葉で詫びる断りのメールがきた。
進歩していることに気を良くして、更に二人にメールした。

そのうちの一人とメール交換が始まった。
何度かメールを交わしたが、突然返信が途絶えた。
やや話が合わない感じはあったから、これで終わり、ということだろう。

短くはあったが、普通の女性と普通のメール交換ができたのだから、大きな進歩だ。
思わず心の中で、歩に感謝している自分に気付いて、首を振った。

俺は、全然進歩していない。

向こうからメールしてきた三十二歳の女性と話が盛り上がって、会うことになった。

“アユミちゃん”の時のことを思い出して、男がきたらどうしようと思ったが、ちゃんと女性が来たのでホッとした。
あんな無茶をするのは、歩くらいのものだろう。

アイツのアドバイスどおり、オープンスペースのあるカフェでお茶をしながら話をした。
店の向かいが花屋で、それを話題にしながら、互いに緊張したままの会話だったが、それでもメールと同じように盛り上がった。
思った以上に美人で、思った以上に楽しかった。

それなのに。

「なんか、違うんだよな…」

部屋に戻って一人の夕食を終え、缶チューハイを飲みながら、パソコンの画面に向かって俺は呟いた。

彼女から、昼間のお礼と、次を問うメールが届いている。
楽しかったことを思い出せば、俺は当然、了承のメールを送るはずなのに、それができない。
俺にはもったいないくらい美人だったし、価値観も合いそうだった。

だけど、なにかが違う。

男と女というものは、理屈ではないのだ──そう結論して断りのメールを送った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ