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歩のおかげで後輩の窮地を救えたのだから、出来る限り付き合おう──と決意はしたものの、いざデート当日となると気は重かった。
今更歩と会うことを渋る気持ちはないが、デートすること自体が久々すぎて、どうしたらよいのかわからない。
歩は
『とりあえず遊びに行くだけですよ。普通に映画とかカラオケとか。最初は…お茶でも飲みましょうか。僕、シンイチさんとちゃんとお話ししてみたいです』
と言っていたが、年齢の離れた男が二人で何を話すというのだろう。
「シンイチさん」
俺の思考は、やや上からの声で中断した。
セルフレーム眼鏡の中で、大きな目を細めた歩が立っていた。
今日は胸にロゴの入ったTシャツとジーンズで、ジレは着ていないから、体形がストレートに判る。
草食系の優男だが、貧相には見えない。
黙っていれば、体格も充分な理知的イケメンだ。
「ごめんなさい。お待たせしましたか?」
「いや。今丁度二時なんだろ?俺が自分が待たせるのが嫌で早くきてるだけだから、気にしないでくれ」
前回も前々回も、歩は約束の時間ぴったりに俺の前に現れた。
恐らく今日も、確認するまでもなく今が二時丁度だろう。
「はい。そうします」
歩はニッコリと笑って頷いた。
その笑顔に、女の子には文句なしにモテるだろうに、難儀なもんだな、と俺は思った。
「それじゃ、行きましょうか」
「あ…ああ。どこに行くんだ?」
「パンケーキが美味しい喫茶店はどうですか?女子向きの店じゃないから、心配しなくても大丈夫ですよ」
悪戯っぽく笑うと、歩は先に立って歩きだした。
商店街を抜けて、更に商業地を暫く歩き、大通りから一本入った裏通りに、歩の言った喫茶店はあった。
歩の言ったとおり、今どきのカフェではなく、昭和からあるようなコーヒーと軽食の店だった。
ドアを開けると、お約束のようにカランカランとベルが鳴る。
ステンドグラスの傘を被った照明が、レンガの壁と赤茶のテーブルセットを照らしていた。
カウンターの端には、観葉植物の陰にピンク色の公衆電話がある。
外とは別の時間の流れる空間が広がっていた。